光線力学的療法IPDT(1)

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2004年北海道懇話会講演
加齢黄斑変性への光線力学的療法
(IPDT)について

          大塚眼科病院 引地 泰一先生

     
はじめに
 今日は加齢黄斑変性症と、その新しい治療法として厚労省からこの5月に認可の降りた光線力学的療法(PDT)についてお話したいと思います。
 日本ではやっと5月に認可が下りたのですが、アメリカ、ヨーロッパでは、既に3、4年前から行われている治療法です。加齢黄斑変性症ですが、まだまだ聞き覚えがないという方がおられるとおもいます。白内障、緑内障、糖尿病網膜症、網膜剥離などから比べると、まだ一般に浸透していない病気だと思いますが、最近非常に増えている病気です。

 私は眼科医としてまだ18年というところですが、私が医者になったときの教科書にはこの病気について日本にはまだない、あっても極めて稀れな病気として載っていました。欧米の白人にしか起こらないという記載がありました。

 ところが今では毎日のように外来にこの病気の患者さんがいらっしゃる有様です。そして60歳台の5%、70歳台の15%、80歳台で25%、実に4人に1人が侵されているということになっています。さらに60歳を過ぎた方の100人に1人は極めて重症の加齢黄斑変性症ということです。
 
加齢黄斑変性症とは?
 それではまず黄斑の説明をいたします。
眼球の断面図を見ますと、前から角膜という透明な膜があり、壁は外から強膜、脈絡膜、網膜の三つからできています。さらに脈絡膜と網膜の境目に網膜に属する網膜色素上皮というものがあることも覚えていてください。

 眼底写真を見ますと、眼底の中央付近に、視神経乳頭が丸くあり、そこから網膜を養う血管が走っています。網膜の真の中心部分を中心窩と呼び、その周囲を黄斑と呼んでいます。黄斑は網膜の中心部分です。眼球壁を輪切りにしてみますと、上側が硝子体(眼球の中側)、下側が強膜(白目)になっています。外側からいうと脈絡膜があって網膜があるのです。

 加齢黄斑変性症は、この網膜と脈絡膜の境目に起こる病気です。その境目を詳しく見ると、脈絡膜側の網膜との境にブルッフ膜という膜があります。逆に網膜の一番脈絡膜に近いところに、網膜色素上皮という細胞が一列に並んでいます。色素上皮の一つ上に網膜視細胞があって、一列に並んでいます。ここが光を感じる神経の細胞です。

 加齢黄斑変性症の定義は「高齢者の黄斑に網膜色素上皮細胞、ブルッフ膜、脈絡膜の加齢変化を基盤として起こる病気」ということになります。視細胞は常に明るい暗い等の情報を受けて脳に伝えているので、常に活発に活動しています。そのためにエネルギーが必要ですし、老廃物も出ます。そういったことを支えているのが網膜色素細胞なのです。

 色素上皮細胞はそれを分解して、最初は老廃物を自分の体の中に溜め込んでいるのですが、年齢が進むにつれて、だんだんブルッフ膜と色素上皮の間にも溜めるようになります。これをドルーゼンと呼んでいますが、このような現象が加齢黄斑変性の変化だと思っていただいてよいでしょう。加齢黄斑変性症は進行度によっていくつかのタイプに分けることができます。

 初期はエイジリレイティドマキュロパティと呼んでいます。ここでは老廃物の沈着が眼底像に現れてきます。色素上皮の色素も異常になって、この細胞は本来茶色のはずが変わってきます。さらに進むとドルーゼンが眼底検査でも分かるようになってきます。黄色く硬いのを硬性ドルーゼンと呼んでいます。さらに進むと今度は淡い黄色になり、これを軟性ドルーゼンと呼んでいます。こうなると硬性より進んだ状態になったと考えられます。

 後期になりますと、日本語では加齢黄斑変性といい、英語ではエイジリレイテッドマキュラデジェネレーションといった名前になっています。(日本語では初期の場合加齢黄斑変性症と症をつけ後期ではそれがなくなる)後期の加齢黄斑変性については二つのタイプがあります。

 一つは萎縮性の加齢黄斑変性、もう一つは滲出性の加齢黄斑変性とよばれています。
萎縮性の萎縮とは色素上皮が萎縮するので、眼底の色調がいろいろに変わってきます。境界が明瞭な円形あるいは楕円形の色素上皮の変性や脱落があり、その結果色が抜けていたり、逆に黒い沈着が強くあったり、比較的大きな地図状の病変が見られます。斑状に色素上皮が萎縮しているのが観られます。

 もう一つの滲出性の加齢黄斑変性は、視力予後が不良で、世界で研究者が必死に治療法を捜している状態です。光線力学的療法の適用もあくまでこのタイプが対象です。このタイプでは色素上皮の下、あるいは上に脈絡膜新生血管というものが発生してきます。この新生血官があるかどうかが、滲出性の診断の決め手となります。

 これは、視細胞の下で色素上皮の上に新生血管が増殖しているシェーマです。新生血管はとても切れやすいので、網膜下に出血を起こしたり、血管からいろいろな成分が漏出して、それが網膜の下に溜まってしまい、機能を障害して視力が落ちたり、その他の症状を生じます。

 滲出性の黄斑変性は症状がさまざまで、発生した時期によっても異なります。この症例は網膜下に出血が見られ脈絡膜の新生血管自体が、黄色に見えます。こちらの症例は病変の領域は小さいのですが、出血があり、新生血管のあることが予想されます。このような出血は何年も経過すると、やがては吸収され滲出の変化もしなくなるのですが、その結果大きな癩痕組織を残してしまい、網膜の機能がすっかり失われてしまいます。

 こちらの症例ではこの部分に水ぶくれがあって、その中に新生血管が隠れているとみられます。
新生血管がどうなっているかを造影剤を入れて撮影しますと、真中に造影剤がたまって見える部分が新生血管で、だんだん造影剤の漏出が広がっていくようすが分かります。新生血管の活動性が高いことがわかります。水ぶくれの症例では時間が経つにつれ、ここに網目状の新生血官が現れます。

 では脈絡膜の新生血管はどのようにして生えてくるのか、長年の研究の結果を、眼底の組織図でみてみます。下側が脈絡膜、上が網膜の間にドルーゼンが沈着して症状を起こしているのですが、このドルーゼンは本来あってはならないものですから、ここに慢性的に弱い炎症が起こっているわけです。

 炎症を防ぐいろいろな細胞が、色素上皮やブルッフ膜の辺りにどんどん集まって来ます。これらの細胞はサイトカインとか活性酸素を分泌して炎症を悪化させたり、サイトカインは他の細胞を呼び寄せて、血官が伸びてくる作用までさせて、結果、脈絡膜側から脆くなったブルッフ膜を通り越して、血管新生が起こるとされています。これらはすべて加齢によって生じた一連の流れと思われます。

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