網膜疾患について

ホーム お知らせ 友の会とは? Q&A 講演録 協力医訪問

2004年東北懇話会講演
網膜疾患について

   弘前大学医学部眼科教室講師 鈴木 幸彦先生

     
はじめに
 こんにちは。弘前大学の鈴木です。去年に引き続きましてよろしくお願いいたします。

 今日は網膜剥離と、他に頻度の多い網膜疾患についてもお話いたします。
主なものに糖尿病網膜症と網膜剥離と網膜血管の閉塞性疾患、その中に網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症が含まれます。次に黄斑部の疾患、この中に代表的な疾患として加齢黄斑変性があり、それについてもお話したいと思います。

 はじめに、診療していて頻度も多いし、視力低下も多い糖尿病網膜症についてお話します。
1.糖尿病網膜症
 糖尿病の患者さんの大体の方はご存じなのですけれど、糖尿病の合併症として網膜症というのがあります。糖尿病を発症してから10年から15年位して網膜に発症する病気です。若いころから忙しさにかまけて治療をしないできたという人が、ある日とつぜん視力低下に気づいて驚くということがよくあります。

 1991年の視覚障害についてのある統計によりますと、糖尿病網膜症が原因というのが一番多いということが分かっています。糖尿病の患者さんに失明する事なく生涯を送って頂くためには、網膜症の有無と、その程度をその都度正確に把握して、それに見合った必要な経過観察と治療を受けるということが、重要になってきます。

 簡単に三つに分類して、初期の網膜症は単純網膜症といいます。末期は増殖性糖尿病網膜症といいますが、この中間を増殖前糖尿病網膜症といいます。

 網膜症は大きく三つに分けられますが、その過程で重症度に関係なく、症例によっては黄斑症といいまして、黄斑に出血とか浮腫等の目立った所見が現れて、視力低下を起こすということがあります。視力に関しては黄斑症も重要な病態です。
 
【単純糖尿病網膜症】
 糖尿病患者さんの網膜の血管には、まずこのように瘤みたいなもの(毛細血管瘤)が出来始めます。それがある時期には血管の内腔の方に血液の流れを邪魔するようなものが所々に出来ます。その血管の先の方は、血液の流れが極端に悪くなっている場所(虚血領域)となります。これが何力所かでき、それが多ければ多いほど、血液が流れていないことになります。

 数箇所に小さい点状の瘤が見られる症例の写真です。こういう単純網膜症が見つかったら、数ヶ月程度の間隔で眼底検査を受けてください。
 
【増殖前糖尿病網膜症】
 増殖前糖尿網膜症の症例です。赤い点々の出血と白い硬性白斑というのが見られる程度ですが、この方に蛍光眼底造影(糖尿病網膜症の程度を調べる検査)をしますと、血管の中を血液が流れているところは白く写るのですが、血管があるはずのところが黒く、何も写らない領域があることが分かります。これは無血管領域といい血液が流れていないところです。このままにしておくと、新生血管という異常な弱い血管が伸びてきて、それが最後の増殖性の始まりです。

 この時期の治療は、無血管領域にレーザー光凝固を行って、それ以上の進行を喰い止めることです。
 
【増殖糖尿病網膜症】
 何もしないでおくと、新生血管が出てきて、やがて破れて大きな出血を起こす状態になります。これが増殖糖尿病網膜症です。

 次の例は網膜の前に出血のある状態です。次は硝子体全体に出血が拡がった例です。こうなったら硝子体手術をすることになります。

 ですから、こうなる前に光凝固して防ぐというのが実に重要です。この写真で白く見えるのが増殖膜で、これができてくると、例えば黄斑が引っ張られて、黄斑に雛ができたり、部分的に網膜を引っ張る牽引性網膜剥離を起こす原因になったりします。視力が下がり、失明につながりますので、こうなる前にレーザー光凝固は十分に行う必要があります。
 
【糖尿病黄斑症】
 増殖膜ができていなくても黄斑に変化が出てくる場合があります。黄斑を光干渉断層計という新しい器械で調べますと、本来なら黄斑の中心窩が薄くて、少し窪んでいるのが正常なのですが、裏胞といって真ん中に水が溜まって膨れているように見えます。これでは眼として正常な機能が果たせないので、視力が下がったり物が歪んでみえたりします。

 硬性白斑がたまってくると、網膜の中に白いものが溜まった状態になり、視力は0.1以下になります。硬性白斑が溜まると、網膜の裏側に鉗子を挿入してつまんで引き出すといった手術をすることもあります。しかし溜まっていた時期が長いと、見ためはきれいになっても視力は回復しないので、溜まる前に黄斑症の治療が必要となります。その時は光凝固をするか、硝子体手術をするか、最近はステロイドの注射を結膜(白目)の奥のほうに針を入れてする場合もあります。

 単純糖尿病網膜症の場合は適切な間隔で定期検査をする、増殖前糖尿病網膜症の場合は光凝固をする、増殖膜糖尿病網膜症になったら、硝子体手術をします。それぞれの時期を逃しますと、後の視力回復は思った様にならないので、状態に合わせた定期検査や治療が大事です。

 日本糖尿病眼学会では糖尿病の患者さんに対して、定期受診を促すことと、内科の先生への情報提供を行うため糖尿病手帳を無料配布しています。

NEXT  BACK


Copyright(C) 2001-2017 網膜剥離友の会 All rights reserved.