14年東海懇話会講演

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2014年東海懇話会講演及び、質疑応答
「加齢黄斑変性について」

 医療法人アイケア名古屋 前院長・顧問 安藤 文隆先生

 
 今日は最近多くなった「加齢黄斑変性」についてお話させて頂きます。

 加齢黄斑変性という病気は昔からありましたが、日本ではあまり多くはありませんでした。欧米では百年ほど前から多くなり、現在では中途失明の原因のトップになっています。日本ではまだ加齢黄斑変性という病気自体を診断する人も充分ではなく、皆さんの中にも、加齢黄斑変性というのはどんな病気だろうと思われる方がいらっしゃると思います。

 最近日本でも増えている病気ですので、今日のタイトルとさせて頂きました。私自身、今は患者さんが多くなって一生懸命やっていますが、まだ病気が起こる仕組みや治療方法が完全に解明されているとはいえません。後でご質問など頂いたら皆様と一緒に考えながら、今日一日を過ごしたいと思います。
●眼球の構造
 目の病気のお話をするときには、眼球がどんな構造をしているかが分からないと、理解して頂けないと思います。そこでこの会ではいつも使っているものですが、この図を見て頂きます。

 眼球を前から見ると、角膜(黒目)があり、黒目の周囲には白目があります。白目は強膜といって、眼球の一番外側の部分です。角膜とレンズを通って光が入り、眼球の一番奥にある網膜に届きます。網膜はカメラでいうとフィルムに当たるところです。

 鏡は透明なガラスの裏に、黒い色の屏風が入っており、それで像が映ります。目の構造もよく似ていて、網膜は透明ですが、その外側に色素上皮という茶色い膜があります。そして、その外側に網膜を栄養する脈絡膜という血管層があります。その血管層の外側に強膜があり、眼球が成り立っています。

 瞳から光が入ってくると、網膜が鏡のように光を感知し、その信号が網膜の一番内側にある神経節細胞から神経線維を通り、眼球の外へ出ていきます。神経線維が集まって眼球の外へ出る所を乳頭と言います。

 物を見る中枢は、脳の後ろの部分にあり、眼球の後ろから出た視神経は、ここに繋がっています。角膜から脳まで、この間の経路のどこかに病気があると、物が見えにくくなってきます。
●眼と血液
 網膜は透明な膜で、その外側に光を反射する色素上皮があり、さらにその外側に、脈絡膜という血管に富んだ組織があります。しかし網膜に栄養を送る血管は、網膜の内側半分にしかありません。

 網膜の外側の層には視細胞という細胞があるため、この辺に血管があると、血管に邪魔されてものが見えなくなってしまいます。視細胞の層には、外側の脈絡膜から血液が入ってきて、網膜はそこから直接栄養を摂っているという状態です。

 眼は血液の流れがあることで、生きています。血液は心臓から押し出され、動脈を通り、身体中の毛細血管を通って組織に行きわたります。そして全身の組織で働いて、栄養が無くなり汚れた血液が、静脈を通り、心臓に帰り、肺に行きます。

 肺の中でまた元気な血液に変わり、心臓を通って動脈へ流れるという形で循環しています。眼にとって血液は非常に大事なもので、血液が来なくなると、眼は働かなくなり、いろいろな病気が起こります。これは、今日この後お話することにも大いに関係してきます。
●黄斑
 黄斑とは、網膜の中で視力の最も鋭敏なところです。瞳の反対側にあり、直径2ミリくらいしかありませんが、ものを見る力の中心になる部分です。加齢黄斑変性は黄斑に問題が出るのですが、この他にも網膜に起こる病気はいろいろなものがあり、それぞれ視力に影響が出てきます。

 その中でも加齢黄斑変性は、中途失明の多い順から、最近は4番目ぐらいになっています。以前はそんなに多くなかったのですが、最近増えている病気です。
●光干渉断層計(OCT)
 これは網膜を縦に切った写真です。視細胞があり、その外側に色素上皮があり、その外に脈絡膜という血管に富んだ組織があります。以前はこの様に断面を見る手段はなかったので、網膜の病気を詳しく調べたり説明したりすることができませんでした。

 これができるようになったのは、光干渉断層計という器械が発明されたからです。この器械の原理は、1990年に山形大学の丹野直弘先生が世界で初めて提唱されました。

 人体に無害な近赤外光という光を使って、身体の中の組織の精密な画像を映し出すことが出来るというものです。その後アメリカで今のような器械が作られ、1998年ぐらいから世界中で使われるようになりました。

 私がこの器械を初めて見たのは、ヨーロッパで眼科学会があり、それに参加した時です。その時この器械をアメリカが初めて発表しました。これは良い器械だと思い、日本へ帰ってすぐ購入の準備を始めました。私が国立名古屋病院(現名古屋医療センター)にいた時代です。

 日本には大学が50ぐらいあり、無論どの大学も、急いでこの器械を買いましたが、日本では6番目に私が買ったことになっています。以前はそれほど精度が良くありませんでしたが、最近は画像が非常に鮮明になってきて、いろいろな病気の診断に使えるようになりました。
●中途失明の原因
 日本で中途失明となる疾患の上位というと、以前は糖尿病網膜症が1位でしたが、6年ぐらい前に緑内障がトップになりました。今日本では糖尿病の患者さんが、ものすごく増えていますが、緑内障は75歳以上の高齢者に特に多く、全年代を合計すると、失明原因のトップになっています。

 3位は遺伝性の難病である網膜色素変性症で、この三つを中途視覚障害の三大原因と呼んでいます。

 強度近視は、以前から日本に多い疾患でした。若い時には、近視が強くても眼鏡で矯正出来ますが、歳を取ってくると視力が悪くなり、最近は強度近視が、失明原因の第5位になっています。

 加齢黄斑変性は、以前は10位にも入っていなかったのですが、今は4位です。今日のテーマは加齢黄斑変性ですが、中途失明の原因のトップにある緑内障と糖尿病網膜症ついても少しお話しした後で、加齢黄斑変性のご説明をしたいと思います。
 
●緑内障
 緑内障は、眼圧(眼の中の圧力)が高くなるために起こる病気で、昔は青ソコヒと呼ばれました。眼圧が高くなると、血液が眼の中に充分に入って来られなくなり、網膜や視神経が萎縮して見えなくなるというのが緑内障です。
◎急性緑内障
 昔青ソコヒは、一晩で失明する病気として恐れられました。ある程度お歳を召した方は、青ソコヒとは恐ろしいものだというイメージを持っておられるのではないかと思います。これは青ソコヒの中でも、急性緑内障という症状です。

 高齢の女性で、遠視があり、白内障手術はまだやっておらず、レンズ(水晶体)のある方が、夜暗いところで長いこと起きていたりすると、急激に眼圧が上がり、一晩で失明してしまうことがあります。

 しかし最近は、このような症状があると分かっていますので、高齢の女性で、遠視があり、前房がちょっと浅いなと思うと、急性緑内障を起こさないように、茶色目にレーザーで孔を開けています。既にこの治療を受けた方が、この中にもいらっしゃるかもしれません。眼科に行けば適宜レーザーをしますので、最近では、急性緑内障はほとんどありません。
◎正常眼圧緑内障
 
 急性緑内障に代わり、最近問題になっているのは、正常眼圧緑内障です。

 今から13年ぐらい前、岐阜県で緑内障の大規模な調査が行われました。その結果分かったのは、日本人と韓国人に、眼圧は高くないけれども、緑内障の症状が起こって見えなくなる人が多いということでした。

 この調査では、40歳以上の日本人の20人に一人が緑内障にかかっており、しかもその過半数で、眼圧は正常の範囲でした。現在では、慢性の緑内障が起こる時、最初は99%の人が正常眼圧緑内障であると言われています。

 日本人と韓国人は、同じ遺伝子を持っている民族ですので、早くからこの現象が分かりましたが、ここ1年ほど前から、東洋人全般に、正常眼圧緑内障が多いということが分かってきました。ヨーロッパ人の緑内障は、はじめから眼圧が上がって起こります。眼圧が低くても起きるのは、東洋人に共通することではないかと考えられるようになりました。

 最近は、緑内障で失明する人は減ってきました。それは眼圧が上がっていなくとも、検査して緑内障の症状があれば、緑内障の治療をするようになったからです。しかしこの病気は、歳を取るとだんだん悪くなってきます。日本は最近寿命が延び、高齢者の数が増加していますが、その全員が眼科を受診するわけではありません。

 岐阜で行われた調査によれば、発見された緑内障の患者さんのうち、それまでに緑内障と診断されていたのは、全体の1割に過ぎませんでした。9割の方は、緑内障があるにもかかわらず、気づかずに過ごしていたのです。

 治療をしないまま歳を取り、気がついたときにはもう手の施しようがなく、見えなくなるという方が現在も少なくありません。このため緑内障が中途失明の原因のトップになっています。
●緑内障の診断
 血流が悪くなり、神経が委縮した結果、視野が欠けてくるという点では、正常眼圧緑内障も従来分かっていた緑内障と同じです。鼻寄りが見えなくなるのが緑内障の始まりですが、自覚症状は何もありません。

 緑内障になっても痛くもなく、普段の生活では両眼で見ていますので、視野が欠けても自覚することは困難です。視野検査をして、初めて気が付くという場合がほとんどです。

 これに対して、先ほどの光干渉断層計を応用すると、視野を測ってもまだ異常が出ないような初期の段階で、緑内障を見つけることができます。この段階で治療を始めると緑内障は悪くなりません。早期に診断がつくようになり、これから失明率が減ることが期待されますが、治療していない人は悪くなっていきます。

 緑内障があるのに、大勢の人が気付かずにいるという状態を変えていかなければなりません。緑内障で受診に来られた患者さんに「私も失明するでしょうか」と聞かれることがあります。「治療しなければ失明するかもしれませんが、治療すれば失明しないというということがデータで分かってきました」と言うと、喜んで帰られます。眼科には今、緑内障の患者さんがたいへん多いです。
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