加齢による目のトラブル

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2010総会講演
網膜剥離と加齢による目のトラブル

   オリンピア眼科病院副院長 西山功一先生

 オリンピア眼科病院の西山です。
今日は「網膜剥離と加齢による目のトラブル」についてお話します。

 「網膜剥離友の会」は発足して36年になるそうですが、私はまだ眼科医になっていない頃です。その頃からの会員の方がたくさんおられて、「歳を取ってから、網膜剥離に関連して注意することがありますか」というご質問に答える形で、患者さん自身が普段気をつけて欲しいこととか、心掛けて欲しいことなどをメインにお話しさせていただきます。

 私は大学を離れて8年になりますので、データとかアカデミックな事ではなく、ご質問にお答えするかたちでメンタルな面も加味して話します。
質問1〜網膜剥離手術後の視力低下や歪みの原因は主に何でしょうか? その経過や改善方法についても教えてください。
●視力低下の原因
☆長期間の黄斑部網膜剥離による視細胞の変性萎縮

 網膜剥離の術後に黄斑上膜(黄斑パッカー)が原因となることが多く、網膜剥離の手術後の視力低下の主因です。長期間の黄斑部の網膜剥離によって視細胞の変性→萎縮が起こり、一度黄斑部が剥がれてしまうと、術後はどうしても元とは同じ視力には戻らないのです。
☆色素上皮の変性萎縮による視力低下

 網膜剥離を専門にしている医師から言わせてもらうと、何としても黄斑部が剥がれる前に処置をしたいと思うのですが、患者さんは視力変化(視野異常とか視力が落ちる)を自覚しながらも病院に行くのが遅れて、黄斑部が剥がれてしまうことが問題です。

 特に長い間網膜が剥がれていると、視細胞の変性萎縮が起こり、視細胞の外側の膜(色素上皮)も変性萎縮して、手術で物理的にはうまくくっ付いても良好な視力が得られない 場合があります。

 手術により網膜はちゃんと復位しているのに、あまり視力が良くならないという患者さんがたくさん外来に来られるのですが、網膜がきちんとくっ付いていれば、取りあえず 、経過観察をしましょうということになります。
●歪みの原因
☆網膜下液の残存

 網膜剥離の手術の直後、網膜の下の水(下液)が黄斑部に残存している場合もあり、非常に粘性の高い網膜下液が溜まっていますと、それで歪みが出ますが、ちゃんと網膜裂孔が処置されていれば、吸収を待つということになります。
☆復位した網膜の鐵による歪み

 網膜はきちんとくっ付いていても、黄斑部に雛が寄ります。網膜剥離が起こってきて、ちょうど黄斑部が半分くらい剥がれた状態で手術をしますと、黄斑部に掛かった雛が残る場合が希にあります。これも、経過を診ましょうということになります。
☆網膜下索状物

 長い間網膜が剥がれていますと、網膜の中に紐状の繊維が、蜘蛛の巣のように張ってしまう方がいます。手術後繊維が残ったまま網膜がくっ付いてしまいますので、これもよほどの場合でなければ、経過観察します。

 これが黄斑上膜で、剥離の術後はは黄斑パッカーというのですが、そういう変化が起こってきた場合は、積極的に硝子体手術で膜を外すことになります。
 
質問2〜手術してしばらく経つと、再発への恐れで不安になります。再発する人としない人は眼底の状態に違いがありますか?
 
 私は術後半年経過すれば、まず同じ部位から再剥離を生じることは殆ど無いと考えています。目を打撲したりする可能性のある格闘技(空手とか柔道)や、水泳の飛び込み等の眼を強くぶつけるような激しいスポーツ以外は、特に生活の制限は必要ないでしょうと、半年くらい過ぎた方にはお話しています。
●若い世代の場合
☆網膜格子状変性

 網膜剥離には20代、50代と二つの山があるのですが、若い方は近視に伴う網膜の格子状変性が起こり、その変性巣の中に小さな孔が開いて、そこから網膜剥離を起こす事が多いのです。ゆっくり進む形の網膜剥離が多いのですが、そういう方には輪状締結術で眼球を縛って、変性巣を全部処置しておけば再剥離の可能性は少ないと思います。

だ若年者の格子状変性巣の網膜剥離に対して部分バックルで悪い所だけ処置してある場合は、360度円周上の残り網膜変性巣を、定期的に経過観察する必要があるでしょう。
☆予防的処置

 硝子体の牽引(網膜に癒着した硝子体が網膜を引っ張る)が明らかに残った未処置の網膜裂孔や赤道部変性巣に対しては、予防的にレーザー光凝固、或いは冷凍凝固術の追加を考慮します。必ずやらなければいけないわけではありませんが、あやしければ処置しておいたほうが良いでしょう。
●中高年の場合
 50代60代の方の馬蹄形裂孔からの網膜剥離は、硝子体剥離が進行してしまえば新しい破れ目が出来る可能性は、だんだん少なくなってきます。最近の網膜剥離の手術は硝子体手術の割合が多くなってきています。硝子体手術のときに、周辺部まで硝子体をきちんと処理してあれば新裂孔の出来る可能性は少なくなります。

 硝子体手術後に再剥離する場合は、術後早期に発生することが多いです。眼球内にガスが入り、うつ伏せで寝ていて、ガスが抜けるか抜けない時に、新しい孔が出来たり、前の処置が足りなかったりして再剥離をするのですが、これも、ガスが抜けて数ヶ月経てば、再剥離の心配は少なくなります。
●強度近視の場合
 強度近視(変性近視)で-15とか-20とかの強い近視の方に伴う黄斑円孔の網膜剥離や後極部裂孔(眼の後ろの方に網膜剥離の因裂孔が出来る)は、殆ど硝子体手術をやるのですが 、硝子体手術できちんと網膜面にある残存硝子体皮質(硝子体の一番内側の表面の膜)を取ってあって、或いは追加で内境界膜(網膜の一番内側の表面の膜)を取ると、網膜が柔 らかくなって伸びやすくなりますので、網膜剥離の治癒率が高くなります。

 このような処置がきちんと行われていれば、強度近視に伴う網膜剥離でも良い確率で治せるようになって来ました。ただ、どうしても治らない場合は黄斑バックル(物を見る中心の裏側に当て物をする)、或いはシリコンオイルを入れて、くっ付くのを待つという場合もあります。

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