緑内障の臨床について

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《東北懇話会講演》
緑内障の臨床について

   前東北大学講師・山田眼科院長 山田 孝彦先生

 基礎的なことをお話ししますが、緑内障は数年前から日本の失明のナンバーワンの原因になりました。

 その前までは長年糖尿病網膜症が中途失明のナンバーワンで、緑内障が2位だったのですが逆転しました。緑内障は治りにくい病気で、罹病率非常に高く、人口比で言うと30人に1人は緑内障ではないかという最近のデーターもあります。

 糖尿病は内科も眼科も色々なことが解って来て、かなり難しい糖尿病網膜症も手術で治せるようになってきましたので、糖尿病で失明する人はかなり減ってきました。

 啓蒙も進んだので、重症な網膜症になる前に発見されることも多くなりました。病気自体をコントロール出来るようになったのと、網膜の手術が上手くなったという眼科の努力もあったと思います。

 緑内障は糖尿病の中からも出てきます。新生血管が出来て視神経が傷害されます。視神経は一端傷害されると元に戻りませんので、緑内障は予防しなければいけません。発見されても軽いうちに止めなければいけません。発見された時点で既に視野が欠けているが進行状態の人もいます
ので、見えなくなる人を減らすのは難しいです。
 
眼の構造について
 緑内障を解って戴くために、眼の構造を説明します。眼の前の方、毛様体で房水が作られ、眼圧が上がるのはこの辺に原因があります。

 後ろの方に視神経乳頭部が見えます。網膜の電気信号を集めて視神経から脳に送るのですが、ここが傷害されるのが緑内障です。
緑内障の病態
 病気の一番の原因は、視神経が眼球に入って来る視神経乳頭部が物理的に圧迫され、切れてしまうことです。折角網膜から電気信号を送っても、乳頭部が傷んでしまうと脳に伝わらないので、見えません。それが緑内障の本態です。

 これまで緑内障の原因は、眼圧が高くなることと思われてきました。しかし眼圧上昇は必ずしも条件ではなくて、眼圧が低くても視神経乳頭が損傷されるタイプのあることが最近わかってきました。

 正常眼圧緑内障とか、低眼圧緑内障とか言いまして、眼圧を下げても変わらないのです。これは非常に大きな問題で、今後の緑内障の研究はそこに集中していくと思います。正常眼圧緑内障は日本人に多いのではないかと言われています。眼圧は薬物でほぼ下がります。

 だめな場合は手術をすれば、今の眼科の技術で眼圧は下げられます。ほぼ100%下げられるのですが、下がっても視神経乳頭が傷害されていれば、視野の欠損が残ります。

 正常眼の視神経乳頭は直径約1.5mmです。黄斑部は一番大事なところで、正常な眼の網膜は動脈、静脈の血流がスムーズに流れ、視神経に送られますが、緑内障は視神経乳頭が凹んできます。検査では視神経乳頭は大事な場所になります。

 もちろん眼圧も視野も視力も大事ですが、我々眼科医が一番最初に診るのが視神経乳頭です。

 昔の眼底検査では動脈や静脈を診て出血していないか、動脈硬化がどのくらいかを診るのが目的だったのですが、自覚症状が無くても視神経乳頭が凹んでいて、緑内障に罹患している人がかなりの比率であるということが分かり、数年前から必ず視神経乳頭を診ています。慣れた医者が診るとかなりの確率で緑内障が分かります。

 スクリーニングなどで、あやしい人も引っかかります。ちょっと凹んでいたら緑内障の疑いあり言われ受診に来られます。多くの方が何とも無いのですが、そのくらいきちんと擬陽性を掴まえようとするのは、緑内障を見落としたくないからです。怪しいと言われて何とも無いのは良いのですが、何とも無いですと言われて放置され、数年後に視野が欠けてしまっては困ります。眼科医としては、視神経乳頭が凹んでいれば、長期にわたって視野検査をし、変化を見たいと思います。

 緑内障(glaucoma グラウコマ)の名前の由来は、日本では眼圧が上がった時に、角膜が混濁して、緑がかった灰色に見えるところから、名前が付いたと言われています。一般的に眼圧の正常値は10〜22と言われています。眼圧が上がって視神経が障害され、特に視神経乳頭部が傷んで見えなくなるというのが緑内障です。

 ただし、先程申し上げたように、眼圧が高いのは、リスクは高いのですが、眼圧が上がらなくても視神経乳頭が傷んでくるタイプがあることがわかりました。

 眼圧が30とか40という数値の場合は直ぐに下げなければいけませんが、20以下の正常値で視野が欠ける人もいます。本当に正常値といって良いのかという意見も、最近はあります。10〜20の方の9割は障害が起きないと言われていますが、日本人の緑内障の約半数は、正常眼圧であるという調査の結果もあります。

房水のコントロール
 この図は日本眼科学会のホームページから借用ですが、房水というのは眼の形を作っている大事な水です。毛様体は水晶体の厚みを変える働きをしている筋肉で、もう一つは房水を作るという大事な働きをしています。毛様体の表面に張っている無色素上皮というところで房水が作られています。

 房水の成分は動脈から毛様体の細胞に供給されます。毛様体は血液の中から色々な物質を抽出して大事な水を作ります。少し組成が変わると真っ白になったりします。手術をする時は房水に近いような水で管理しないと眼はたちまち駄目になってしまいます。

 作られた水は虹彩の裏のスペースである後房へ行き、後房から真ん巾の方に行き、瞳孔を通って前方に行きます。あるタイプの緑内障は、虹彩が房水の出口をふさいでいるため発作を起こします。

 房水は瞳孔を通って、前方の隅角(角膜と虹彩の間)にある線維柱帯というところを通ります。線維柱帯はフィルターのような物で、これが目詰まりして房水が詰まる場合もあります。フィルターを通してシュレム管(360度一周するようなパイプ)から房水静脈という静脈に結合して身体に流れて行きます。これが心臓を通って動脈から無色素上皮に送られ、そこで房水になるという循環です。

【目薬】
 一連の流れの中のどこかで、房水が多く作られたり、また流れを妨げられたりすると、眼圧が上がり、緑内障を発症します。

 目薬が眼圧を下げるのは、毛様体に働いて房水の産生を減らすから、或いは隅角から房水静脈への流出を促進するからです。房水の産生を抑えるか、流れを良くするかという二種類の薬で眼圧を下げます。

【手術】
 虹彩が房水の出口をブロックしている場合、虹彩の付け根のところに穴を開けると、そこにバイパスができます。虹彩の裏側の後房と、前側の前房の間に穴を開けますと、瞳孔を通らなくても房水は隅角に行きますから眼圧が下がります。

 線維柱帯というフィルターが目詰まりしている場合には、これを直接切る手術もあり、穴を開けて、新しいルートを作り、水を眼の外に流す手術もあります。これは濾過手術と呼ばれ、今一般的に行われています。
【治療の現状】
 緑内障手術と薬は、眼圧を下げる治療で、残念ながらまだ今のところ視神経の障害を治す薬物等は開発されていません。これが出来れば眼圧が低い緑内障を治せるのではないかと思いますが、まだ原因がわからない面もあります。すでに欠けてしまった視野を治す特効薬もありません。

 眼科が唯一できるのは、眼圧を下げて進行を押さえる、もしくは遅くする、それによって視力を維持することだけで、これが主要な治療となります。

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