加齢にともなう眼の病気

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2011中国四国懇話会講演
「加齢にともなう眼の病気」

   みなもと眼科病院長 皆本 敦先生

 皆様こんにちは、皆本と申します。

 眼科医になりまして25年、みなもと眼科を開業して5年になります。5年前まで広島大学病院で、
主に網膜硝子体外来を担当しておりました。眼科医の専門には、緑内障外来、小児眼科外来な
どがありますが、その中で私は、網膜剥離などの眼底疾患を専門としておりました。

 その関係で4年前からこの会に参加させていただき、これまで3年間は、ほぼ網膜剥離に限っていろいろな問題をお話してきましたが、今年はもう少し範囲を広げて「加齢にともなう眼の病気」というテーマでお話したいと思います。

 「加齢」という言葉は、私が眼科医になった25年前にはまだ使われず、老化と言っていました。老人性白内障とか、老人性円板状黄斑変性というように、病気の名前にも老人性という言葉が付いていましたが、その後次第に老化という言葉が加齢という言葉に置き換えられてきました。老人性円板状黄斑変性も、今では加齢黄斑変性と呼んでいます。加齢の意味で、エイジングと言うこともあり、経年変化という言葉も使われますが、経年変化というと、物を扱っているような感じがしますので、人の全体的な変化を表わすには、やはり加齢という言葉がしっくりくるのではないかと思います。

 眼科で「目」という文字を使いますと、眼球と眼球の附属器官を含み、瞼も含みます。加齢性変化は色々なところに起こり、瞼も年齢とともに少し下がってきます。今日は様々な加齢性変化の中から、網膜剥離に関係のある、網膜・硝子体・水晶体の変化についてお話ししたいと思います。
☆白内障
◎水晶体の加齢性変化
 眼には2枚のレンズがあります。角膜は、眼の表面に曝されている透明な膜で、これもレンズの働きをしています。角膜の後ろに虹彩(茶目)があり、その後ろに凸レンズの形をした水晶体があり、これがもう一つのレンズです。水晶体は、毛様小帯という細い線維で、眼の壁に固定されています。これは蜘蛛の巣の糸のように細く、しかしもっとしっかりした強い線維です。

 水晶体の中はとても透明で、光をよく通す性質があります。眼の中に細い光を通すと、光で水晶体を切ったような写真を撮ることができます。これは、12歳の方の水晶体の写真ですが、透明なので白く写っています。こちらは92歳の方の水晶体で、黄褐色に濁っています。(写真@)水晶体は加齢に伴い、透明性が失われていきます。これが白内障という状態です。
 まだ視力が下がっていなくても、水晶体に濁りがあれば、私達は白内障と呼んでいます。視力は、白内障の程度と濁り方のパターンによって影響されます。水晶体は水晶体嚢という袋に包まれていますが、単純な無構造の物ではなく、上皮細胞が袋の内側にきれいに並んでいます。線維があるのですが、規則正しく並んでいるので透明性を保っています。
 水晶体の中には核という部分があります。果物のように皮があって、果肉があって、種があると考えて頂いてよいと思います。種が核、果肉が水晶体皮質で、皮が皮膜という構造です。

 加齢に伴って、水晶体は厚みを増し、規則正しく並んでいた上皮細胞が不規則になって、線維の並び方が乱れてきます。また、核が大きくなって硬くなり着色してきます。このように水晶体のいろいろな部分で、光に対する透明性が損なわれる変化を、白内障と呼んでいます。

 30代ぐらいまでの若い頃は、自然に水晶体の厚みを変えて、ピントを合わせています。遠くを見るときは薄く、近くを見るときは厚くなり、網膜に像を結ぶのですが、水晶体がしだいに硬くなってくると、近くにピントを合わせるのが難しくなってきます。これが老視(老眼)という状態です。

 10代半ばの調節力は、理論上無限遠から13D(眼の前7〜8)までピントを合わせることができます。40代前半になってくると3D(30)より向こうはピントが合うのですが、それより手前は難しくなります。これが大体42〜3歳で起こる変化です。そして自分の水晶体だけではピント合わせが困難なので、道具の助けが必要になります。水晶体は加齢に伴い、濁ると同時に硬くなってきます。

 正常な水晶体は、透明なので光を充分通しますが、白内障になると濁ってきます。透明なガラス越しには、外の景色がよく見えますが、スリガラス越しには何も見えません。強い白内障になると眼の中にスリガラスが入っているのと同じ状態です。加齢性変化が起こっていない眼では、遠くも
近くも良く見えますが、老視になると、遠くは見えていても近くは霞んできます。白内障になると、
遠くも近くも白く霞んで見え難いというのが簡単なイメージです。

 これは白内障の写真です。この方は、水晶体の隅のほうに白い濁りがたくさんあります。(写真A 左上)。中心が濁っていないので、視力は良く1.5ぐらいです。自分ではまだ気が付いていないので 、この写真を見せるとビックリされます。濁りが中心に広がってくると、光が散乱して対向車のヘッドライトが眩しいなどの自覚症状が出てきます。

 この方も、隅の濁りが目立ちますが、前の方に比べると真ん中が白っぽく、核に濁りがあります。視力は0.9ぐらいです。(写真A右上)
 この方は全体的に濁っていてスリガラス状態です。視力は手動弁と言って、眼の前で手を動かすと、上下に動いているか、左右に動いているかがわかるという程度です。(写真A左下)

 これは白内障の極度に進んだ状態で、我々は成熟白内障と呼んでいます。(写真A右下)水晶体が熟していて、果肉に当たる皮質の部分がドロドロの粥状になり、核と呼ばれる硬.い部分が沈んでいます。

 白内障も放置するとここまで進みますが、もちろん個人差があって、誰でもこのようになるわけではありません。

 皆さん加齢に伴う白内障は、60代70代に起こるというイメージがあると思いますが、眼科医からすると、加齢に伴う白内障は、早い人で30代後半から起こってきます。ただ非常に頻度が少なく、発症のピークは60代後半ぐらいですので、このくらいの年齢で出る病気と考えて間違いではありません。
◎白内障の治療
 現在行われている白内障の治療は、水晶体の濁りを取って、そこに人工の水晶体(眼内レンズ)を入れるというのが、世界中どこでも標準的なものです。

 手術はまず水晶体の袋(嚢)に穴を開け、超音波を発する細い器具を差し込んで、超音波の振動の力で水晶体を破砕します。水晶体はゼリー状の場合もありますが、硬くなるともろい蝋のようになり、そのまま吸い取ることはできません。そこで砕いて吸引し、残った袋に人工の水晶体を入れるのが白内障手術です。(写真B)25年ぐらい前には、まだ超音波手術が一般的でなく、水晶体の袋は残しますが、大きく切って核を取り出し、残った皮質をきれいに洗い流して、眼内レンズを入れました。
 それ以前、1970年代の後半までは、水晶体を袋ごと全部摘出する方法しかありませんでした。眼内レンズを入れることができませんので、厚いレンズの眼鏡を掛けるか、コンタクトレンズで水晶体の代わりをしていました。

 最近はアクリルの柔らかいレンズを使います。眼内レンズは水晶体の代わりをする部分と、自らを支える二つの腕で出来ています。レンズの形のまま入れようとすると、眼を大きく切らなければなりませんが、レンズを小さく折り畳み、小さな切り口から入れて、中で広げるのが最近の方法です。

 切開するところを小さくすると、縫合しないですむという利点があります。

 糸をぎゅっと縛ると、その周辺に歪みを生じ、乱視を起こす危険があります。せっかく濁りを取ったのに、手術によって乱視を起こし、見えにくくなるということが以前にはありました。

 そうした事態を避けるために、工夫を重ねて現在のような手術になりました。これは実際の手術の写真です。細い注射針の先をちょっと曲げたものを、水晶体の袋にあてて、引掻き傷を作るように穴を開けます。

 次に鋭いナイフを使い、水晶体を砕いて吸い取る器具や眼内レンズを入れる通路(トンネル)を作ります。このナイフは使い捨てです。核の周りに水を入れて水晶体が袋から分離したところで、超音波をあてて吸い取っていきます。水晶体の濁りを吸い取ったら、同じ穴(トンネル)から柔らかい眼内レンズを押し込み、水晶体の袋に固定します。これで人エレンズが水晶体のあった場所に入り 、同じ働きをするようになります。

 手術は、早い場合は10分、合併症の多い難しい症例では4、50分掛かることもあります。時間は手術の成否にあまり関係ありません。平均的な手術時間は、現在どこの施設でもだいたい15〜
25分ぐらいだと思います。

◎多焦点眼内レンズ
 白内障の手術はこのように進歩してきましたが、もうひとつ紹介しておかなければならないのは、数年前に認可された「多焦点眼内レンズ」です。単焦点レンズは、遠くにピントが合うレンズを入れると、近くは老眼鏡が必要ですし、手元がよく見えるようにすると、遠くを見るには眼鏡やコンタクトレンズを使わなければなりません。

 多焦点眼内レンズは、遠くも近くもピントが合うというレンズで、最近実際に使われるようになりました。ところが大きな問題がありまして、健康保険が一切適用されません。先進医療の認可を取った施設では、一部に保険が適用されますが、それ以外のところでは、眼内レンズだけでなく、術前の検査、手術、術後3ヶ月の検査まですべてが自由診療になります。これをトータルすると、安い所で20数万円、高い所で40数万円の費用が掛かります。医療施設によって、コストが違ってきますので、各施設が設定したコストで、患者さんと契約書を交わし、手術を行うことになります。

 先進医療の認可を受ける施設には一定の条件が必要で、5年以上の臨床経験があり、一定の試験を通った眼科専門医がいること、看護師や視能訓練士のようなスタッフがいること、という縛り
があります。

 また多焦点レンズの手術には特有のリスクがあります。計算上はうまくいくはずのレンズが、入れてみるとどうも合わないことがあり、そんな時は遠くも近くもずれてしまいます。したがって再手術があり得ることを事前に理解した上で、受けて頂くのがよいと思います。再手術の頻度はそう高くはありませんが、希望される方はこうした点についても、医師とよく話し合っておくことをお勧めします。

 なお単焦点レンズの手術代は、手術に使う薬剤など全て含んで15万円ぐらいです。3割負担の方なら4万5千円、一割負担で1万5千円というところです。任意加入の医療保険では、多焦点レンズの手術を先進医療特約の対象とするものが増えています。この手術を考える場合は、お使いの保険で、給付金が出るかどうかを確認されるのがよいと思います。

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