白内障手術について(1)

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《2006》関西懇話会講演
網膜剥離に関連した白内障手術について

   大阪回生病院眼科部長 佐藤 文平先生

     
 
 今日は一般的な白内障手術を説明し、その中に網膜疾患のことを織りまぜてお話していきたいと思います。

 話を5つに分けまして、まず眼の基本的な構造について述べ、そのあとは白内障手術の歴史的なことと現在の状態、それから白内障や、手術の時期について、実際の手術の最中の問題点、合併症等についてお話します。そのあと網膜の疾患と白内障手術の関連についてもお話いたします。

 
【眼の構造】この図を参照して下さい)
 
 目の構造ですが、ここにスリット光の入っているのが瞳孔で、水晶体はこの瞳孔の後ろにありまして、普段は外から病変の見えないのが普通です。次に、角膜、虹彩、瞳孔があり、その後ろに水晶体があります。直径が約1cm、厚さが約4mmの円盤型の臓器です。前のほうは水晶体の前嚢といい、ここには水晶体の上皮細胞が、赤道部のところまで伴ってあり、そのあとは後嚢になります。後嚢には上皮細胞はついていません。

 水晶体の中心を核と呼び、加齢により膨隆します。この部分を皮質といいますが、水晶体繊維細胞から成ります。この毛のようなものは水晶体を支えている毛様小帯といいますが、毛様体が無数に出ていまして、水晶体の赤道部から前嚢、後嚢の一部に付着して水晶体を支えています。

 水晶体の構成成分といいますと、3分の2は水、3分の1は蛋白質です。その蛋白質の中に水溶性のクリスタリンと不溶性のアルブミノイドがあります。白内障が進行しますと、この水溶性蛋白が減って、不溶性蛋白がふえて逆転してきます。

 水晶体の役割は光の屈折です。前方から入ってきた光線が水晶体で屈折して網膜上でピントが合う、これが正視眼の近眼も遠視もない方の状態です。屈折させて像を結ばせピントを合わせる作用が水晶体の作用です。

 もう一つは毛様小帯というのがあって毛様体から出ていますが、毛様小帯が水晶体を引っぱったり緩めたりして近くにピントが合うようにする、これを調節といいます。調節作用は若い人には強く働きますが、30、40、50と加齢に従って衰え、老眼という状態になります。

 白内障をもった水晶体でも屈折は起こりますが、ここを通った光は濁った水晶体に吸収されて眼底までゆく中に光の量が減って、いわゆる霞み目という症状が起きます。ところで白内障というと視力が落ちるというふうにお考えでしょうが、症状はいろいろでして、初期には疲れ目の症状がでます。

 最近以前より長い時間、物が読めないとか、明るいところで眩しいといったのが初期の症状です。もう一つ、2重、3重に見えたりする、特に夜間に多いようです。夜間は瞳が開きますが、瞳が開いた状態で月や街灯を見ますと、滲んだり、3つも4つにも見えるという症状が、初期にあります。進行に連れて視力が下がってきますが、一時的な近視化による老視の軽減という症状もあります。

 
【白内障の成因】
 
 白内障の成因ですが、一番多いのは加齢性白内障です。2番目以降の順番は特に無いのですが、外傷によるもの、事故で異物が目に入ったなどの直接的なもののほかに、スポーツや喧嘩などで、眼を打った鈍的打撲が原因のこともあります。こういう時、水晶体に物が刺さったとか、貫いたといえばすぐに白内障になりますが、打っただけではすぐにはならないで、数ヵ月とか数年たって打ったほうの眼だけ白内障に進行します。次に全身疾患に伴うものとして最も重要なのは糖尿病です。

 あとはアトピー性皮膚炎です。20歳前後の方の白内障の主な原因となっています。ほかの眼の病気にともなって起きるのを、併発白内障といいます。多いのはブドウ膜炎、病的近視、網膜剥離や緑内障などの手術後に起こるものです。薬剤性としては、ステロイドに因るものが有名です。先天性白内障は希な疾患ですが、原因には風疹症候群とかダウン症候群などがあります。

 白内障の有病率は、60代では60%以上が罹患しています。70を越しますと、8割から9割の方が白内障にかかっています。初診の方で「あなたは白内障にかかっています」というと一様に驚かれますが、決して驚くことではないのです。

 水晶体の濁り方ですが、核がこのように黄色く濁ってくる場合、周辺の皮質から濁ってくる場合があります。また特殊な例としては、水晶体の後嚢が濁って来て、その場合は中心部から濁ることが多いのです。ステロイドや、ブドウ膜炎が原因の場合が多いです。こういったように中心部が先に濁れば、全体が濁っていなくても視力は著しく落ちるので、早く手術する場合が多いようです。それに対して核白内障は真ん中が濁っているように見えますが、光を通しますので、かなり進行しても案外、視力がいい場合が多いです。
 
【手術の時期】
 
 手術を受ける時期ですが、あくまでも一般的な表現ですが、矯正視力が0.5前後が受けるのに一番適当です。0.5ぐらいになりますと、それまで老眼鏡ですらすら読めたのが、時間がかかるようになってきます。あとは個人のライフスタイルによって変わってきまして、仕事上困る方、それから日常的に運転される方も免許の更新のときに0.7以上ないといけませんから手術を受けることになります。またスポーツをする、趣味で細かい仕事がしたいというとき、たとえ趣味であってもその方にとって重要なら適応の一つとなります。

 またあまり進行すると手術が難しくなりますから、最新の方法では手術ができなかったり、炎症が強くて視力の回復が遅れたりなど、患者さん自身が損をする場合もでてきます。片方だけ白内障が進行している場合にこういうケースがよくあります。

 白内障の治療は点眼薬の治療法もありますが、一般的に有効なのは手術をおいて他にはありません。手術療法は3種類ありますが、現在は皆さんご存知のように超音波乳化吸引術がメインであります。

 私が医者になりました25年前頃は嚢内摘出法といいまして、角膜の根元のところを大きく切って、水晶体を丸ごと取り出す方法が一般的な方法でした。もちろんこれでも視力は出るのですが、この手術法では人エレンズは入らないので、分厚い凸レンズの眼鏡をかけて生活し、眼鏡を外すと全くピントが合わないという状態になるわけでした。片目だけ手術すると、反対の眼とバランスが取れないので、両眼とも悪くなってから手術しました。

 それ以後嚢外摘出という、これも昔からありましたが、さらに洗練された方法が生まれて、このときから一枚後嚢を残して、ここにレンズを入れる方法が一般的になりました。しかし嚢外法の場合も傷ロは大きく、視力の回復は今のように早くありませんでした。超音波乳化吸引術の傷口は3mmぐらいで、水晶体を砕いて取り出すので傷口は小さいのですが。人エレンズを入れるために以前は6mmくらい広げて入れないといけなかったのですが、最近は人エレンズが改良されて、3mmのままで入るようになりました。時代は小切開の白内障手術という時代に入ったわけです。
 
【白内障手術の歴史】
 
 白内障手術は古くは、ローマ時代から記載があります。日本の一番古い医学書『医心方』にも984年に記載があるようです。18世紀以降、ダビエルやグレーフェによって水日盟怜の嚢内摘出術、あるいは昔の嚢外法というのが編み出されて、そこから近代白内障手術が始まりました。

 1960年頃に冷凍法という嚢内摘出手術の方法が編み出されて、これ以後私が医者になった80年代までの20年間は冷凍法による嚢内摘出が主流でした。しかしその間にも一部の先達によって人エレンズの研究があって、実際人間の目に入れられていました。冷凍法による嚢内摘出の6年後には、ケルマンという人が超音波の第1号機を作っています。この機械は今の機械とは全く違って危険なものだったので普及はしませんでした。しかしこのように一部では最先端の技術がすでに編み出されていたわけです。

 その間アメリカでは嚢内法でもレンズを入れたいというわけで、後嚢が無くても入れられるレンズというのが作られました。前房レンズや虹彩支持レンズといわれますが、あまりよくなくていろいろな合併症がありまして、現在は廃れています。

 最近のすぐれた超音波白内障手術が始められたのは1987年、ギンベルらの貢献によるものでして、まだ20年も経っていません。その後も倦む事なく進歩を続けて、小切開、3mm、4mmから小切開というのですが、無縫合の白内障手術ができました。切開創が小さいので入院も要らない、その日のうちに帰れるようになりました。

 フォールドダブル眼内レンズといって、レンズそのまま入れるのではなく、柔らかいので半分に折って、あるいは円筒の中に丸く包みこんで入れてしまうという小切開用レンズも編み出されました。

 2000年代に入ってからは、つまり現在は極小切開手術といいまして、2mm程の切開創から白内障手術ができて、しかもレンズも入ってしまうといったことが現在進行形で行われています。

 眼内レンズですが、こちらは固いレンズで直径が5・6mm、これは切開創が6mm必要ですが、必要に応じて使用されています。こちらはフオールドダブルといいまして、直径は6mmありますが、二つ折りの半月の形にして3mm強の切開創から入れられるので、傷口が小さいまま手術が最後まで出来るようになりました。

 手術の流れですが、強角膜切開といって角膜の端をメスで切りますが、メスの幅は3mmぐらいです。次に前嚢切開といって水晶体の前嚢をまるくきります。最近はギンベルという人の開発したこの丸く切る方法が主流です。中の核を超音波で溝を掘って半分に割って、さらに縦に溝を掘って4分の1にして一つずつ吸引していきます。最後に二つ折りの眼内レンズを入れると、中でレンズが広がり固定されます。
 

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