手術後の見え方

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2009年総会特別企画〈対談〉
手術後の見え方、改善の方法などについて

   自治医科大学 牧野 伸二先生 X 会員 郡司 直樹さん

郡司さん

 郡司直樹と申します。69歳です。網膜剥離友の会世話人で、名簿係を担当しています。
昨年の総会で、牧野先生が複視に関する講演をなさいました。引き続き行われたグループディスカッションで、牧野先生を囲むグループに参加したのを契機に、先生の診察を受け、物が二重に見える複視が解消しました。

 そこで、その経緯について、私の病歴をお話しながら牧野先生に医学的解説をしていただくという形で進めさせていただきたいと思います。それでは牧野先生よろしくお願いいたします。

牧野先生

 自治医大眼科の牧野です。出身は岡山県です。本日はよろしくお願いします。

 一昨年およびその前と、網膜剥離友の会の方からご支援をいただきまして、患者さんが実際困っているユガミとか、ダブリとかいう視力よりももう一寸高等なといったら語弊がありますが、見えるようになって知覚されることがあるユガミとダブリについて、患者さんの生の声をいただきながら日々の治療にあたっていますので、そこをふまえて、前半部分でどうしてこうなるの、後半部分でどうしてあげたらいいのという話をさせていただきたいと思います。

郡司さん

 私は昭和46年6月に右眼に網膜剥離発症し、東京厚生年金病院で、故清水昊幸先生から強膜バックリング手術と光凝固手術を受けました。

 私は強度近視のため眼球が前後にラグビーボール状に肥大しているので、剥離部をそのまま光凝固してくっつけても別の部分にストレスが加わり剥離再発の心配があるから、眼球の長軸を縮めるためにバックリング手術が必要と清水先生から云われました。

 退院後、昭和46〜49年は東京厚生年金病院へ通院して、術後検査の受診を続けました。清水先生が昭和49年に自治医大教授に就任後は、平成14年まで自治医大附属病院へ通院して、検査受診を続けてきました。この間、平成10年3月に清水先生が定年後は、故伊野田繁先生への受診となっています。

 私は右眼に光凝固を多数行ったから経年により白内障が進み視力が低下してきましたので、平成12年12月に自治医大附属病院で伊野田先生から右眼白内障手術を受けました。この時、若い時には気付きませんでしたが、加齢と共に顕在化してきた複視について相談しましたが、網膜剥離手術後既に約30年経過しているから無理だと云うことでした。

 人は左右の眼で見た別々の情報を脳の視角野で立体視として認識しているのに、何故ダブリが発生するのか、バックリング手術後に複視が生じるのは何故か、ダブリが加齢と共に顕著になる理由など、複視のメカニズムについての解説を牧野先生にお願いします。

【複視が発生する理由】
牧野先生

 人間の眼球は左右にある程度の距離(男性62o〜66o、女性60〜62o)離れて存在しています。そのため、厳密には外界の物体から受ける両眼のイメージは左右眼でわずかに異なることになります。

 理論的には外界の物体に対応する両眼の網膜の場所(網膜対応点)は右図に示すように円周上となります。

 円周上のみ網膜が対応しているので、ここからずれるとダブルことになります。でも、これでは明瞭に認識できる範囲が狭すぎて困ります。

 そのため、ある程度この円周上からずれているものでも、両眼のイメージを重ねて融像により奥行き感、立体感あるものとして認識される範囲が人間には備わっています。融像域は年齢によっても変わります。

 

 この両眼でものを重ねて見える範囲の融像域は水平方向、上下方向、斜め方向(回旋方向)により広さが様々で、特に上下方向は水平方向に比べてはるかに狭く1.4度程度であることが知られています。これに対して、斜め方向では感じる程度に個人差が大きくて、10度以上あっても自覚しない人がいる程です。

 このような両眼視機能が成立するためには、次に示すいろいろな条件が必要です。

  ・両眼とも網膜の中心で見ている
  ・両眼ともある程度視力がある
  ・両眼ともある程度視野がある
  ・眼球運動が正常である
  ・融像する機能がある
  ・斜視がない

 昨年の総会でお話した「網膜剥離に対する強膜バックリング術後の複視」から、内容の要点を復習でお話します。

 まず、患者さんの自覚症状として、ユガミとダブリについてです。
ものがゆがんで見えることを、歪視症、変視症と云います。この原因は細かくいうと、光や色を感じる視細胞の配列の乱れということになります。眼底にむくみがあったり、網膜の上に膜があると、それによって、きちんと配列している視細胞に乱れが起こって、そのためにものがゆがんで見えるということになります。

 これに対して、ものがだぶって見えることを、複視と云います。これには片目で見てダブル単眼複視と、両眼で見るとダブル両眼複視があります。単眼複視は白内障や乱視を矯正しない場合にでも起こることがあります。

 両眼複視が本日お話する主題ですが、人間の眼は右と左にあって、いろいろな方向を向こうとして眼球運動が起こりますが、それに支障が生じた場合に生じる症状、ということになります。

 

 眼球運動と外眼筋の作用ですが、両眼はものを見るときに共同して動きます。

 それを司っている外眼筋には、左図に示す外に向けようとする外直筋、内側に向かせる内直筋、上に引張る上直筋、下に向くのは下直筋、斜め方向に引張る上・下斜筋など、合計六本の筋肉があります。

 それらを前から見ると、眼球の外の壁(強膜)に付着して、それぞれの方向に引張っているということになります。

 網膜剥離は眼底に穴があいて、網膜の下に水が溜まってしまう病気で、網膜剥離の手術の目的は、網膜にあいた全ての穴を探して確実にふさぎ、剥がれた網膜をくっつけることにあります。現在行われている手術法には「強膜バックリング手術」と「硝子体手術」があります。

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