強膜バックリング術後の複視

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2008年総会講演
網膜硝子体疾患術後の眼球運動・複視に関する研究
網膜剥離に対する強膜バックリング術後の複視

   自治医科大学眼科学講師 牧野伸二先生

     
【はじめに

 私は昨年網膜剥離友の会の皆様からご支援を頂きました。今年も同じテーマで引き続きご支援を頂くことになり、深く感謝いたしております。

 本日はそのテーマである「網膜硝子体疾患後の眼球運動・複視」についてお話したいと思います。特に網膜剥離に対する強膜バックリング手術後の複視について、お話させていただくことにしました。

 複視と一口にいいますが、患者さんからは、「歪んで見える」「ダブって見える」と二通りの訴えがあるので、二つに分けて考えてみたいと思います。

 ものが「歪んで見える」ことを、歪視(わいし)症、または変視症といいます。一方の「ダブって見える」ことを複視といいます。これには片方の目で見てダブる場合の単眼複視と、両眼で見てダブる両眼複視とがあります。

 「歪んで見える」原因は、光や色を感じる視細胞が、本来きれいに配列されているはずが、なにかの原因で配列が乱れてしまうこと。つまり眼底にむくみがあったり、網膜の上に膜が張ってくしゃっと縮んだりしていると、きれいに配列されているはずの視細胞が乱れてしまった結果、歪んで見えてしまうのです。

 「ダブって見える」の片目の場合は、白内障のあるタイプでも起こるし、乱視があるのにきちんと矯正していないために起こる事もあります。今日お話するのは両眼で見て起こる両眼複視についてです。原因はいろいろありますが、目を動かす筋肉に異常があったり、神経に異常があったりする場合に起こります。

人間の目は右と左とあって、いろいろな方向にむこうとして眼球運動を起こしますが、それがうまくいかない場合に起きる症状です。この図は、ある患者さんが描いたのですが、右目で見たものと、左目で見たものをダブらせて描いたものです。

 人間の目は左右二つあって右を見ようとすると、そちらの外側の筋肉と、もう一つの目の内側の筋肉がそろって動きます。片目だけ動かすことは難しいですね。上を見ようとすると、両目とも上を向こうとしますし、下を見るときも同じく両目とも下に動きます。

 この共同して動く働きを司っているのが、外眼筋です。種類はいろいろあって、外に向けようとする外直筋とか、内側に向かせる内直筋、上にひっばる上直筋、下に向くのは下直筋、斜め方向にひっばる上斜筋など、合計6本の筋肉がそれぞれ動いて何かを見ようとする動きを司っています。

これは、右目を正面から見た図で、ここに角膜・黒眼があり、内側に引っ張る内直筋が、黒目の脇から5ミリのところについていて、引っ張ると、眼は内側に動く、6ミリぐらいのところに外直筋がついて引っ張ると、外側に動くようについています。これらの眼の動きを眼球運動といいます。それに支障がおきた場合、原因に強膜バックリング手術が関係していることがあります。

網膜剥離手術前の検査

 まず光を当てて眼底を見る検査が行われます。さらにコンタクトレンズのようなもので、詳細に眼底を見る検査を受けます。

 眼底は正常なものでは網膜がきちんとついています。穴が原因で起こる裂孔原生網膜剥離では、裂け目のように網膜に穴が開いて、下に水が溜まってしまう症状が見られます。

【網膜剥離の治療


 網膜にあいているすべての穴を見つけて確実に塞いでしまうことです。剥がれた網膜を元どおりに復位するのが目的です。塞いだ周囲はレーザー光でやけどの状態にして、再び裂けることを防ぐということになります。

 塞ぐ手術の方法は二つ、「強膜バックリング手術」と「硝子体手術」があります。今日お話するのは強膜バックリング手術のほうです。

 剥がれた網膜をくっつけるにはバックルという材料を裂孔のある網膜の外側に縫いつけて、強膜を内側に凹ませて裂けたところを下に押しつけます。多くの場合、輪状締結術といって、眼球を細いシリコンの糸で鉢巻きをするように一周させて縛る方法を併用します。

 こうすると眼内の圧力が上がるので、強膜側から剥がれた網膜の隙間に電気分解針を刺すと、溜まった網膜下液は、外に出ていって隙間はふさがり、網膜は元の位置に復位します。孔の種類によっては丸く細長いプロンペという材料を使う場合もあります。

 次にそれ以上剥がれないように、裂けた孔の周囲にレーザー光凝固、強膜側からの冷凍凝固、ジアテルミー凝固などで癩痕をつくり、網膜をしっかり癒着させます。

 以上が網膜剥離のバックリング手術のあらましです。バックル材料は眼筋肉の下につけるので、そのため筋肉の動きが悪くなり、腫れたりくっついたりして、ものがダブって見える可能性があります。

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