網膜剥離の病態と最新治療法(1)

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2005年総会講演
網膜剥離の病態と最新治療法

   伊野田眼科クリニック 伊野田 繁先生

     
 今日はこの会設立の発端となった網膜剥離という疾患についてお話します。今ではほとんど治る疾患ですのでそんなに問題が多いとはいえないかもしれませんが、先日、会員の一人から質問があり、バックリング手術をして眼球に感染が起きてしまったというのです。まだまだ問題があるのも事実です。

 今日は初めての方もいらっしゃるので、裂孔原性網膜剥離の症状と治療を中心にお話します。
【眼の構造について】
 まず正面から見た眼球の図です。(こちらの図を参照して下さい)

 上まぶたの下に瞳がある、この例は散瞳しているので大きく、少し白内障があります。真ん中に水晶体、その前に瞳孔、その回りの茶目の部分を虹彩といいます。白目の部分は結膜、その下に強膜という組織があります。断面で見ますと前に角膜、その後ろに瞳があり、水晶体の後ろが、硝子体といわれる部分で、約4ccほどの体積を占めています。一番後ろに網膜という光を感じる膜があります。

 ほぼ中心より少しずれて、網膜で受けた光の信号を頭に伝える視神経の出口があります。出口の部分を視
神経乳頭といいます。網膜は全面を覆っているのではなく、鋸状縁といわれるところまでです。

 どうして物が見えるのかというと、外のものが光を発して角膜、水晶体を通って、網膜に投影されて見えるのです。反対向きに投影されているのですが、人間はそれを正立像と認識して見ています。眼底を見開きにしてみますと、通常眼底写真に写る範囲がこの部分だけです。

 真ん中に黄斑があり、視神経乳頭がずれたところにあります。鋸状縁というのは、鋸の歯のような形をしているのでそう呼ばれています。(眼底を)さらに拡大してみると、静脈、動脈があって真ん中に一番大切な黄斑があります。ここは視力にとって重要な部分で、ここが正常なら視力は1.2まで出ますが、回りが正常でも黄斑が痛んでいると、0.1以下に下がってしまうという程大事な場所で、また黄斑部には細かいものや色を感じる能力の大半もあります。

 網膜を断面にして(水平に置いて)みますと、上側が硝子体、下側が強膜部分になります。網膜は一番内側の内境界膜から一番外側の網膜色素上皮まで10層あって、上から9層部分を感覚網膜とか神経網膜といい、最後の層を網膜色素上皮とよんでいます。その外は脈絡膜です。

 
【網膜剥離の発症】
 網膜剥離になるとこの感覚網膜と色素上皮の間が剥がれます。網膜全体が剥がれるのではなく、感覚網膜と色素上皮の間にだけ分離が生じるのです。

 裂孔原性網膜剥離は、液化した硝子体が、網膜が裂けてできた裂孔を通して(網膜の)下側に入ってくる状態をいいます。これが病気の症状です。

 硝子体は年齢が若いときには眼球いっぱいになっていますが、年齢が加わるとともに変化して縮んできて、後部硝子体剥離といって、ひとりでに剥がれてきます。この現象は大体正視の方で60歳前後に起きてくるのですが、近視の方はもっと早くに起きるといわれています。年を経ると、硝子体を構成しているヒアルロン酸が分離していって、一部分は液化した状態になり、分離していって、硝子体の皮質が網膜の内境界膜との間で剥がれてきます。これが後部硝子体剥離です。

 通常は少しづつ老化が進むのですが、強度近視の方の場合は、それが早く起きるといわれています。硝子体が剥がれるときに一部が網膜に強く癒着していると、強く網膜を引っ張って裂け目を作る、そのとき硝子体は有形硝子体と液化硝子体に分かれていますから、液化した水の部分が裂け目から網膜の下に入りこんで網膜を持ち上げ、剥がれていくといったことになります。

 
【飛蚊症と網膜剥離】
 飛蚊症と網膜剥離は関係があるといわれますが、それは硝子体が剥がれるときに網膜の一部を千切って、そこの血管が切れて出血が起きるため、また硝子体と網膜の血管のある部分に癒着が強くあって、そこを引っ張って出血を起こすと同時に、さらに網膜の一部までもはがして裂孔ができてしまうからです。

 飛蚊症は網膜剥離のサインと考えていいのですが、実際はただ硝子体が剥がれただけという場合も多いわけでして、必ずしも全ての飛蚊症が網膜剥離を発症しているわけではないのですが、重要なサインとは言えます。
 
【網膜剥離のタイプ】
 網膜剥離の手術した患者さん1,500名を調べて分かったことは年齢によってピークがある、大まかに20代と60代とにピークが分かれています。

 網膜剥離といってもいくつかのタイプがあって、若い人に多いものと高齢者に多いものとに分かれます。故清水昊幸先生は、それを5つの形に分類しています。他にもわけ方はいろいろありますが、先生の分け方で説明しますと、

 1.周辺部裂隙型
 2.周辺部円孔型
 3.孔が一番端にある鋸状縁型
 4.孔が中間部にある中間型
 5.黄斑部型です。

 こうして分けてみますと、周辺部裂隙型が約50%、円孔型が30%で、網膜剥離の大体3/4は、周辺部に孔があり、中間部型は10%、鋸状縁型が約5%、黄斑部型も5%ぐらいの割合になりました。

 ですから、網膜剥離の孔は3/4は端のほうにあります。あとは少しづつですね。それぞれについて説明します。

 1.周辺部裂隙型。この典型的なのは、この辺りに網膜格子状変性という変成層があって、そこに硝子体が強く癒着している部分があり、網膜を引っ張って大きな裂孔ができるタイプです。50歳代に多く発病し、進行は比較的早く、後部硝子体剥離に伴って生じることが多いのです。網膜格子状変性を伴っており、多くはバックリング手術の適用になります。

 2.周辺部円孔型。(この例は)三つほど孔が開いていて、回りは格子状変性を起こしています。これは2番目に頻度が多い型で、30%の割合です。若い人に多く、進行は比較的緩やかです。後部硝子体剥離はごく一部にしか見られず、格子状変性を伴い、通常のバックリング手術を適用します。よく治るタイプです。

 3.鋸状縁裂孔。これは毛様体襞部に裂孔があります。全網膜剥離の約7%で、高齢者の白内障手術後などに多い。または、若い人ではアトピーなどの患者に多い。裂孔の検出が難しい、また巨大裂孔を生じる場合があります。原則的にはバックリング手術の適用となります。

 4.中間型は、神経乳頭の血管沿いに裂孔のできるタイプで、少しの出血を伴うことがあります。網膜剥離の約9%で、沿血管裂孔とか、格子状変性に伴うものなどありますが、孔の位置が非常に奥にあるので、硝子体手術が第一選択になります。

 5.黄斑型は、黄斑の真ん中に孔のあるタイプで、強度近視の方に多い。全網膜剥離の5%でほぼ100%が強度近視、中年以降の女性に多い。硝子体手術、ガス注入の適用となります。安藤先生の開発されたプロンペ適用のバックリング手術でもよろしいのですが、黄斑型ではどの方法がいいか選択が難しいところです。最近は硝子体手術で、徹底的に硝子体皮質を除去してガスを入れて復位させるというのが、一般的です。

 こういう方は強度近視が多く、眼球全体が前後方向に長く伸びていて、網膜が追いつけないためで、プロンペなどを使って眼球の後部の強膜を戻して、ガスを入れるというのも一つの有力な方法だと思います。硝子体手術がだめでこういった方法を取った例もいくつかあります。

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