最新の網膜剥離手術

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2012年総会講演
「最新の網膜剥離手術について」

   竹内眼科クリニック院長 竹内 忍先生

 5年前に大学を辞めまして、個人で竹内眼科クリニックを開業しております。
主にやっているのは、網膜剥離を中心とする網膜硝子体の手術です。先ほど池田先生のお話にあったような、黄斑上膜とか、黄斑円孔、糖尿病網膜症、その他いろいろな網膜硝子体の手術をメインにやっております。

 私の所はもう全部外来手術でございますので、入院しないでやっております。予めご案内したタイトルは、「最新の網膜剥離手術について」ということですが、網膜剥離の手術は、大体すでに完成されているもので、特段新しいことはありません。けれども、私なりの考えで、現在やっている治療法をお示しして、この演題に対する回答としたいと思います。

 最初にこの講演のお話を頂いた時、私はある市民公開講座で眼科のお話をしたところでした。「外保連(外科系学会社会保険委員会連合)」という組織がありまして、日本外科学会、日本眼科学会などの外科系の堂会が集まっています。当初は、社会保険の診療報酬点数が適正かどうか考えようというところから出発して、現在では日本の医療制度全般について、問題点を検討し、提言するということをやっています。

 この外保連の主催で、3月に「生活の質を高める医療〜世界に誇る日本の手術」という公開講座が開かれました。その時、眼科では、北里大学の清水公也先生が白内障手術のお話をし、私は「網膜剥離の最新手術〜失明危機の克服に向けて」というタイトルで話をしました。今日はその時の内容をもとに、お話したいと思います。
 
《いろいろな網膜剥離》
 網膜剥離は、網膜が外側の脈絡膜という膜から離れるために、見えなくなるという病気です。脈絡膜から離れた網膜は、物を見ることができなくなり、剥がれた部分が視野の欠損として自覚されます。進行すると、網膜が全部剥がれ、全く見えなくなってしまいます。

 物を見る仕組みを復習しますと、外界の像がカメラのレンズに当たる水晶体を通って、網膜に逆さまに投影されます。網膜に映った画像が電気信号に変えられ、視神経を通り、それを脳に送って、脳で見ているということになります。ビデオカメラと同じで、像がどんどん入って来るのを、みな電気信号に変えて送り出しています。(眼球の断面図

 黄斑部は、水晶体を通った光が像を結ぶ網膜の中心部です。網膜の中でも一番機能が良い所、色や形がハッキリ見えるのが黄斑部で、中でも最も感度がよいのが中心窩という所です。その黄斑部が傷んでしまうと、字も書けない、読めないということになりますから、非常に大切な部分です。

 網膜の外側には脈絡膜という膜があり、外側から網膜に、酸素と栄養を与えています。その外側に強膜があって、眼球の外壁を作っています。眼球の前の方は、房水という水がスペースを埋めています。房水は、虹彩の根元にある毛様体というところで作られて、眼球の中を循環しています。

 水晶体と網膜の間には、硝子体というゲル状の組織があります。硝子体は、水とコラーゲン線維と、ヒアルロン酸ナトリウムから出来たドロッとしたジェル状の組織です。これは加齢と共に変化していきますので、この硝子体の加齢による変化が、網膜剥離の一つの原因にもなっています。

 硝子体の変化が起こり、線維と水が分離してくると、線維が網膜に影を落として、飛蚊症が起こります。線維と水の分離が進むと、硝子体の中に水のたまった大きな部屋ができ、あるときその水が後ろへ溢れ出し、残った硝子体は前方へ収縮するという変化が起こります。これを後部硝子体剥離と呼んでいます。

 後部硝子体剥離が起こったとき、硝子体と網膜に癒着したところがあると、網膜が引っ張られ、孔が開くことがあります。この孔から、水が網膜の裏側に回って網膜がはがれるのが、裂孔原性網膜剥離です。網膜剥離の手術をしていて、今日でも最も多いのが、この裂孔原性網膜剥離です。

 ところが網膜剥離の中には、孔がないのに剥がれてくるものがあります。例えば増殖糖尿病網膜症では、糖尿病のために、網膜の表面に本来あるはずのない異常な膜が張ってきます。するとこの異常な膜が収縮して引っ張ることにより、孔が開いていないにもかかわらず、網膜が脈絡膜から離れてしまいます。これを非裂孔性網膜剥離のうちの、牽引性網膜剥離と分類しております。

 孔の開いていない網膜剥離には、このほかに滲出性網膜剥離があります。これは網膜の血管に異常があったり、あるいは脈絡膜に腫瘍ができたりすると、そこから水が滲み出してきて、網膜の下に溜まり、網膜が脈絡膜から剥がれてしまうというものです。現在ほとんどの網膜剥離は、孔が開いて剥がれるもので、年間1万人から2万人に一人という発生率です。今日はこの裂孔原性網膜剥離についてお話いたします。

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