最近の硝子体手術の進歩

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2012年総会講演
「網膜剥離治療に関する最近の硝子体手術の進歩」

   大塚眼科病院 引地泰一先生

 札幌から参りました大塚眼科の引地です。当院は松下卓郎先生が、私の大先輩として勤務されています。

 今日は二つのテーマについてお話したいと思います。

 一つは「小切開硝子体手術」、眼に対する侵襲の少ない新しい手術についてお話します。

 二つは、「クロモビトレクトミー(Chromo vitrectomy)。クロモは色や色素の意味で、ビトレクトミーは硝子体手術です。色素を使って透明なものを見やすくし、硝子体手術を安全かつ迅速に行おうという最近の流れのひとつです。

 私の研究題目にも出てきましたトリアムシノロン(Triamcinolone)と、ブリリアントブルーG(Brilliant Blue G)は、眼の中の透明な部分を染色する目的で使われている薬剤です。

 今日は、裂孔原性網膜剥離にまつわる低侵襲の硝子体手術と、クロモビトレクトミーについてお話させていただきます。
【裂孔原性網膜剥離〜二つのタイプ】
 裂孔原性網膜剥離のおさらいをします。発症する年齢は、10〜20歳代と、50歳以降の二つのピークがあります 。(図1)

 10〜20歳代の若い方に起こる網膜剥離では、網膜の格子状変性巣の中に、小さな萎縮性の円孔がぽつぽつと開きます。若い方なので、硝子体はまだ生卵の白身のように、ドロッと硬く、硝子体の液化が少ないという状態です。孔も小さく、網膜の裏に入っていく液体も少ないので、ゆっくり進行するのが特徴です。

 もうひとつの好発年齢は50歳以降です。こちらの網膜に出来る孔は、いわゆる馬蹄形裂孔と呼ばれるもので、かぎ裂き状に裂けていきます。この孔は、通常後部硝子体剥離が起こるのに伴い、網膜が牽引されて生じます。

 後部硝子体剥離は、硝子体の液化が進行した結果起こるものです。孔が比較的大きく、網膜の裏に入っていく液体が多いので、網膜剥離が広がっていくスピードも速く、一気に進むという特徴があります。 
 これは、50歳以降の裂孔原性網膜剥離が起こる仕組みと特徴を示したものです 。(図2)この図の紫で表示した部分が、網膜から剥離した硝子体で、後部硝子体剥離が起こっています。周辺部の網膜に硝子体が接着し、網膜を眼球の中央側へ引っ張る力が働くため、網膜裂孔ができています。液化した硝子体が、裂孔を通して網膜下にどんどん入り込み、網膜剥離が進んでいきます。

 正面から見ると馬蹄形裂孔が出来ていて、裂けた網膜の浮き上がった部分(網膜弁、フラップ)に硝子体が付着して牽引し、網膜弁は周辺側にまくれ上がっています。
【治療法について】
 50歳以降の網膜剥離の場合は、硝子体の牽引を軽減し、除去するというのが理に適っています。格子状変性があって馬蹄形裂孔ができていても、網膜が剥離していない症例では、レーザーで孔の周囲を囲むという治療を行います。

 孔自体が治るわけではありませんが、網膜とその外側にある脈絡膜との接着力を強くして、網膜が剥がれないように予防するという方法です。

 しかし、既に網膜が剥がれている症例に対しては、硝子体手術や、従来から行われている強膜内陥術が唯一の治療方法となります。(図3)

 若い方の網膜剥離は萎縮円孔が原因です。硝子体の液化は少なく、硝子体が網膜を牽引する力も強いものではありません。ですから硝子体の牽引を取り除くというよりは、孔自体を塞いで、硝子体の液体部分が網膜下に回り込まないようにするのが治療の最初のコンセプトになります。通常行われるのが、強膜内陥術です。 (図4) 

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