知っているようで知らない緑内障の話

ホーム お知らせ 友の会とは? Q&A 講演録 協力医訪問

〔2007〕関西懇話会講演
知っているようで知らない緑内障の話

 高槻赤十字病院眼科部長 植木麻理先生

 
 私は、治療を担当した患者さんの専門家になりたいと思っているうちに網膜剥離から緑内障、瞼から涙目と対象がかなり拡がってきました。今回は網膜ではなくて緑内障の話をさせていただきます。

 緑内障という言葉は、テレビや新聞などから耳にして知っておられるはずですが、実際は患者さんから、「緑内障になったらみんな見えなくなってしまうのか」「白内障とどう違うのか」と訊かれます。「知っているようで知らない」この病気についてお話します。

 ◆緑内障はどんな病気
 ◆緑内障の検査
 ◆緑内障の治療
 ◆緑内障は本当に怖い病気か、に分けてお話します。
【緑内障はどんな病気か】
 2003年に作られた緑内障診療ガイドラインによる定義はつぎのようです。

「緑内障の定義は、視神経と視野に特徴的変化を有し、通常眼圧を十分に下降させることにより、視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常の疾患である」

 これを聞いたらいっそうわかりにくくなりますね。
まずものを見るということの説明をします。眼球の断面を示します。人間の眼球はよくカメラにたとえられますが、物を見るとき、光が角膜という透明な膜を通過し、絞りである瞳孔という茶目の真ん中を通って、レンズである水晶体にはいります。

 次は眼底、網膜の写真です。
ここが黄斑部といい、細かい文字や色が鑑別できる錐体細胞があるところです。ここに光が集まるように水晶体が調節して、網膜に到達した光は、視細胞で感じ取られ、感じたことを視神経線維と言う電線を通じて脳に伝達すると、初めて物が見える状態になります。

 緑内障とは、眼圧によって視神経に障害を来す疾患です。眼圧が高いということは、眼球はボールみたいなものですから、ボールに空気が入りすぎるとカチカチに固くなった状態と思ってください。

 眼球は茶目の後ろにある毛様体で房水という水をつくって、水晶体や角膜に酸素や栄養分を補給し、老廃物を受け取る働きをしています。房水は角膜と虹彩の間、隅角というところから眼の外へ流れ出るという循環を行っています。このような循環によって眼の固さも一定に保たれているのですが、何かの原因で排出がうまく行かなくなったり、房水が眼の中に溜まると眼圧が高くなるのです。眼圧が高くなると、眼球の組織を圧迫してしまいます。

 光は視細胞を刺激し、視神経線維を通じて、眼球の奥の視神経乳頭に集まり、一旦屈曲して脳に送られていくのですが、眼圧が高いと、視神経を強く圧迫することになり、伝達が途切れて脳に伝わらなくなる、見る範囲が狭くなるという視野の病気が緑内障です。網膜剥離は5千人に1人という割合で発病するといわれています緑内障は平成12年から15年に多治見市で市民の検診を行ったところ、40歳以上の人の約5%に見られました。

 この病気は加齢とともに増えていく傾向で40歳台では2〜3%なのですが、70歳を越えると13%、なんと7.5人に1人の割合で緑内障の可能性があるということがわかりました。またこのうち治療を受けている人はわずか20%、ほとんどの方はこの検査で初めて病気がわかったということです。

 緑内障のほとんどは、房水を流出させる隅角が開いている開放隅角緑内障というタイプで、その中の90%は正常眼圧緑内障といって、眼圧が正常なのに神経が痛んでいるといった種類の方々でした。

 緑内障の病型としては大きく分けて、眼の中の房水を出す隅角が、開いている型と閉じている型の二つに分けられます。緑内障で多いのはこの隅角が開いている開放型ですが、これは二つに分けられます。眼圧が高くて神経への圧迫のある原発開放隅角緑内障と、眼圧が正常であっても神経が何かの原因で弱ってきた正常眼圧緑内障です。

 正常眼圧緑内障は欧米人より日本人に多いのです。例えばハワイでは日系人に多いので遺伝の関与も示唆されています。日本人には近眼の人が多い、血圧が高いということから眼球の形や血の流れが悪いからともいわれていますが、よくわかっていません。

 次は隅角の狭くなったために眼圧が高くなった閉塞隅角緑内障、この中に急に眼圧が高くなってしまっても適切に治療すれば神経への障害なしに治ってしまう急性緑内障発作というのもあったのですが、今ははずされています。

 また開放隅角緑内障は、やや男性に多いといわれていますが、閉塞隅角緑内障は、女性に一方的に多く、また東洋人に多いともいわれています。東洋人女性は体も小さく、眼球も小さいために、相対的に隅角も狭いために起こりやすいのだといわれています。

 閉塞隅角緑内障の治療としては、機械的な閉塞が原因なので、閉塞をなくすのが治療の基本となります。レーザi光線で虹彩に穴を開けて後ろに溜まった房水を流してやる周辺虹彩切開術です。隅角が開いてもまだ眼圧が高い人は混合型緑内障といわれます。

 他の病気が原因で起こる続発緑内障、例えば眼に炎症や出血が起こって房水をこす隅角の網目が詰まって眼圧が高くなったという開放隅角型と、癒着などで、隅角が完全につまってしまった閉塞型とにわけられます。

 こういう続発緑内障の場合は、ほかに原因疾患がありますから、治療の基本はそれをなおすことです。炎症によるものならステロイドの点眼で消炎、糖尿病網膜症による眼虚血によるものなら、虚血の改善をします。網膜剥離に続発しておこるシュバルツ症候群と呼ばれる症状もあります。剥離した網膜ら視細胞が遊離して前房にまわり、隅角を目詰まりさせて眼圧が上るといわれています。

 また網膜の端のほうに裂け目ができた場合、房水の流れによって細胞が漂着しやすくなります。傷によって目に怪我をした場合起きるので、若い男性に多く見られます。シュバルツ症候群も原因となる網膜剥離が治ると、眼圧も自然に下がるようです。

 次は発達緑内障です。1万人か1万5千人に1人くらいで、隅角発達異常によって生まれつき眼圧が高くなることがあります。特に子供だと眼球が柔らかいので、眼圧が高いと眼球が伸びて大きくり、黒目が大きく見えます、写真で見ると右の眼圧が高いので右黒目が左目に比べて大きくなっています。

 治療は子供の場合、薬による治療が難しいのと、手術のほうが比較的結果がよいので手術療法が選択されます。

 緑内障が疑われた場合、その病型、程度によって治療方法も様々なので病気の把握が大切です。一度の診察では充分把握できないため、治療開始までに何回か診察させていただくことがあります。病気の状態をよく把握するのに時間がかかるというところに、この病気の特殊性があると理解してください。

NEXT  BACK


Copyright(C) 2001-2017 網膜剥離友の会 All rights reserved.