小切開硝子体手術の強膜創の観察

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2012年支援費報告
「小切開硝子体手術における眼内内視鏡を用いた強膜創の観察および眼底観察レンズの比較」

 大塚眼科病院 引地 泰一先生

 
 
【はじめに】
 
 近年、硝子体手術の適応となる疾患が増えており、裂孔原性網膜剥離に対する治療法として硝子体手術が選択される機会が増加しています。

 私は裂孔原性網膜剥離に対する初回手術法としての硝子体手術の有効性を Ophthalmic Surgery, Laser & Image(Hikichi T, et a1. Surgical outcomes of 23- and 20-gauge vitrectomies for rhegmatogenous retinal detachment associated with posterior itreous detachment. 2011)に報告いたしました。

 現在、硝子体手術の主流となっている23ゲージや25ゲージシステムを用いた小切開硝子体手術では、眼底の観察方法として広角観察システムを用いることにより広い視野を確保し、眼底全体を同一視野で観察しながら手術操作を行うことが一般的となっています。

 しかし、広角観察システム下での周辺部眼底観察では、像が歪み、立体感も低下する欠点があります。また以前から用いられている角膜上にレンズを置いて眼底を観察する視野の狭い観察系を用いても、周辺部の眼底観察では広角観察システムほどではないもの像の歪みや立体感の低下といった同様の問題点が指摘されています。

 
 硝子体手術の合併症として、眼内に器具を挿入する強膜創への硝子体陥頓、さらに硝子体陥頓により引き起こされる網膜裂孔や網膜剥離、あるいは鋸状縁断裂といった強膜創に関連する疾患が知られております。最近の小切開硝子体手術強膜創は、従来の20ゲージの大きさから23ゲージや25ゲージといった小さな切開創となり、さらに強膜を斜めに切開し、長めの強膜創を作成することにより、無縫合による自己閉鎖が可能となりました。

 強膜創にトロカールと呼ばれる管を挿入し、管腔内で硝子体カッターや眼内照明などを出し入れすることにより、強膜創へのストレスを減らし、良好な自己閉鎖が得られるように工夫されています。さらに強膜創へのストレス軽減は、上述の強膜創にまつわる合併症の減少につながる可能性が期待されております。
 
 しかし、20ゲージと23ゲージ硝子体手術後の網膜裂孔や網膜剥離の発生頻度を比較検討した私の研究では(Hikichi T, et al. Incidence of retinal breaks in eyes undergoing 23- or 20-gauge vitrectomy with induction of posterior vitreous detachment. Retina 2012)、術後の網膜裂孔や網膜剥離の発生頻度に関し、23ゲージ硝子体手術の優位性を明らかにすることはできませんでした。
 本研究では眼内内視鏡を用いて硝子体手術終了時の強膜創およびその周囲眼内組織の様子、特に強膜創への硝子体陥頓に着目し観察し、小切開硝子体手術の安全性を検討しました。さらに最近開発された硝子体手術時の眼底観察用レンズを使用し、観察像の特徴を評価しました。
【方法】
 対象は50例53眼で、このうち40例43眼に対し23ゲージシステムを用いた小切開硝子体手術と広角観察システム(BIOM, Oculus Inc. Petaluma, CA, USA)を用いて硝子体手術を行い、周辺部眼底の操作を遂行しました。また、残りの10例10眼で非接触型の広角観察システム(BIOM)の代わりに最近開発された角膜上に載せて使用する接触型広角眼底観察用レンズ (ハノラビュー、HOYA株式会社、東京)を用いて硝子体手術を施行し、非接触型広角観察システムでの眼底観察像と比較しました。
 次に最近開発されたtruncatedレンズ(HOYA株式会社)を用いて再度、最周辺部眼底を観察し、広角観察システム下での眼底観察像と比較しました。トロカール先端部周囲の硝子体ゲルは切除し、トロカールの先端から内部に硝子体ゲルが迷入しないように心がけました。

 さらに眼内操作終了後、全例(50例53眼)で、23ゲージ眼内内視鏡を用いてトロカールが挿入された強膜創の観察を行いました。
 3ヶ所の強膜創に設置したトロカールのうち、眼内照明プローブを挿入たままの状態でトロカールを抜去し、別のトロカールから挿入した眼内内視鏡を用いてトロカールが抜去された強膜創を眼内から観察し、強膜創への硝子体陥頓の有無を確認しました。

 3番目のトロカールには灌流液を眼内に供給するインフユージョンチューブが挿入されており、これを抜去した後での眼内観察は低眼圧のリスクが極めて高くなるため、前述の強膜創一か所のみの観察としました。

 
 全症例53眼の内訳は、黄斑前膜が27眼、裂孔原性網膜剥離が15眼、黄斑円孔が5眼、強度近視黄斑円孔網膜剥離が2眼、強度近視網膜分離症が4眼です。

 上述のtruncatedレンズは、硝子体手術時の眼底観察を可能とするために従来から用いられてきた角膜上に載せて使用するレンズの一部を切り落とした(truncated)レンズで、角膜中央から偏位しやすい形状にデザインされています。硝子体手術の術者は、術中に角膜上に置かれた眼底観察レンズが角膜中央から偏位し、観察光の屈折が変わり、意図せず周辺部眼底に焦点が合うことを経験しています。そこで意図的に角膜上のレンズを角膜中央から偏位させ、周辺部眼底を観察することを目的にtruncatedレンズが開発されました(図1)。

 

   

図1 

Truncated lens レンズの一部を切り落とし(truncated)、角膜中央から偏位しやすいデザインとなっています。

 
 
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