知っておくべき眼疾患

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第12回関西懇話会講演
知っておくべき眼疾患」

 大阪医科大学 植木 麻里先生

【白内障の治療について】
@後発白内障手術

 これは目薬の麻酔だけで可能で、1〜2分の手術です。器械の前で普段の診察のような状態で座っていただくと、真ん中に小さい穴を開け、濁りを飛ばしてしまって、またすっきりと見ることができます。

 定期的には白内障の手術が終わって見えるようになったからといって、眼科に行かないのではなく、時々は眼科に行って変わりがないかどうか診てもらうようにしてください。

 白内障で濁っていたのが20分か30分の手術できれいなレンズに入れ替えると、また光が眼の中に入って見易くなります。
 
A眼内レンズの種類

 最近の眼内レンズですが、最近のトピックスとして、昔の眼内レンズは、一個の度数しかありませんでした。

 手前から遠くを見ると、例えば遠くにピントを合わせれば近くは老眼鏡が必要になりすまし、手元を見易くすれば、遠くを見るときに遠用の眼鏡がいるということで、後で眼鏡が必ずいりますという手術でしたが、最近多焦点レンズという眼内レンズの遠近両用レンズが出てきました。ただし現在は自費です。例えば36万円ぐらい自費を払えばこのレンズを選択することができます。

 私はこのレンズ、まだちょっと改良の余地があると思って、自分では患者さんには使っていないのです。「近くも遠くも見えますよ」と言うのですが、レンズとしては近く用のレンズと、遠く用のレンズ度数が分けて入っているので、30cmのところと50cmのところは見えるのですが、間の3m、2mのところはぼやけるというわけです。若い時の自分の眼に戻るわけではありません。

 レンズが近く遠く近くというようにまだらに入っているので、物を見たとき滲んで、特に夜などは瞳孔が開いてしまいます。光がいっぱい遠くに行くところも近くに行くところも通ってしまうと、滲んで見えるということも、まだ開発されていないという問題がありますので、選択される場合は要相談です。

 どうしても眼鏡を掛けたくない、と言われる方に関してはいいと思うのですが、そうでなければ単焦点のほうがレンズとしての完成性は高いと考えます。
【失明原因について】
@世界の失明原因

日本では、年間120万人の方が白内障の手術を受けて視力を回復しています。白内障というのは治る病気なのですが世界を見ると、実は失明原因の半数が白内障です。アフリカ、アジア、中国、南米というところでは白内障が原因で失明に至ります。医療が受けられないために、そのまま見えなくなってしまうという方が非常に多くいるのは事実です。
A日本での失明原因

一方、我が国の失明原因は緑内障が24%、糖尿病が20%、加齢黄斑変性症と網膜色素変性症が同率ぐらいで3位になります。

ここからはちょっと気をつけないといけない眼の病気というお話をさせて頂きます。

残念なことですが20年ぐらい前までは糖尿病網膜症が失明原因の1位でした。日本においても発展途上国と同じように、白内障も失明原因となっていましたが、医療が行き届いて広がってきて改善され、糖尿病の網膜症は、レーザー治療などその他の治療がすごく発展したことによって、緑内障が失明原因の1位になってしまいました。
【緑内障について】
 緑内障とはその眼が耐えうる眼圧(眼の硬さ)以上になって神経が障害されるという病気です。緑内障は視神経と視野に特徴的な変化を有して、眼圧を下げれば視神経障害の改善もしくは、進行を抑制しうる眼の病気と定義されています。
@緑内障の語源

 白内障は瞳を見れば白いので白内障と分かるのですが、緑内障はどういう語源ですかと言われますが、青っぽいとか鉛色とか、英語で虚ろな目(Glaucoma)、青とか緑と言うようです。昔は青ソコヒと言われていました。眼全体が何となく青っぽくなって見えなくなるという病気です。

 これは先天の発達緑内障のお子さんの眼ですが、正常な眼に比べて、すごく水色っぽい、青っぽい色をしています。これが青ソコヒ、緑内障の語源になっています。大人の場合はそうならないのですが、子供の場合は眼が柔らかいので、眼圧が高くなると眼が伸びていってしまいます。正常な眼の茶目(角膜)に比べ、大きくなってしまう状態です。
A緑内障という病気

 緑内障というのは、眼圧によって視神経が障害され視野が損失する病気ですが、眼圧というのは何かというと、眼の硬さです。眼の硬さというのは、どこでコントロールされているかというと、眼の中で房水という水を作って、それを排出するという水の循環によってコントロールしているのですが、これが何らかの原因で障害されると、眼球はボールのようになっていますから全てのところに圧がかかってきます。

 特に眼の中の視神経が眼から出て行くところというのは、神経線維が一回屈曲して、視板(視神経円板)という非常に硬い組織のところを通って行くのですが、こういうところが中から圧迫されますと、神経線維が断裂してしまって、眼から脳へ情報を伝えることができなくなってしまいます。これが緑内障という病気です。
B緑内障による視野障害

 視神経が切れてしまうと、物を見ても神経線維や視細胞が障害されて、その跡のところが見えなくなるので、視野が欠けていきます。実際の患者さんの眼の中を診ると、正常では神経の出口がオレンジ色をしていますが、進行してくると神経線維が切れて無くなってしまい、真っ白になってしまいます。

 実際の見え方ですが、正常ですと上60度、下70度、外側100度、内側60度という範囲が見えているのですが、だんだん上の部分が見えなくなって進行してくると、ほとんどの部分が見えなくなってきてしまいます。

 実際には真っ暗に見えるわけでは無く、初期には欠けている部分の物は見えないのですが、自分では欠けている部分が真っ黒に抜けているとは感じません。中期になってくると並んでいる烏3羽が2羽に見えてしまうような見え方です。緑内障というのは非常に自覚症状が出にくい病気なので、定期的に眼科検診を受ける必要があります。
C緑内障有病率

 緑内障になる人はどのくらいいるのですかと言われるのですが、全40歳以上の5%。100人中2人か3人は緑内障ということになります。

 ご質問に、「デタントールという目薬を処方されていますが、通常の緑内障目薬が効かない人に出す目薬だ」と言われているというのがあったのですが。日本にはたくさん緑内障の方がいますが、ほとんどの方が正常眼圧緑内障といって、眼圧は正常でも、神経が脆弱であるためとか、血流が悪いために眼球の構築上の問題で、緑内障の変化を起こしてくることが
ほとんどです。

 そういう方に関しては、通常、緑内障というのはだんだん歳を取ると増えて、眼圧だけではなく、血流など色々なものが関与してくると言われています。80歳になると50人に2人か3人は緑内障の人がいますという状態です。

 緑内障の治療というのは、眼圧を充分に下げれば視野の進行が抑えられる病気だと言われているのですが、実はそうではありません。先ほどお話した血流とか神経の脆弱性も出てきます。ただし今のところ証明されているのは眼圧の下降だけが証明されているので、眼圧の下降が進行予防になります。
 
【眼圧予防について】
主として、次のような治療を行います。
@薬物治療

 治療としてはまず目薬で眼圧を下げます。それでも効かなければレーザー治療、手術治療というようになってきますが、将来的には、多分もっともっと研究が成されて、循環を改善すれば視野の進行が止められるのではないかとか、神経の保護の治療がもっとできる治療が出てくるはずです。

 緑内障の目薬はこんなにあり、これはほんの一部です。これに後発品というのが加わるので、今、日本で100剤近い目薬が出ている状態ですが、色々な機序によって分かれています。もっとも古い薬は、交感神経作動薬といって瞳孔を縮めて眼圧を下げる薬です。

 次に出て来たのがβブロッカー(β遮断薬)これは交感神経の遮断薬です。その他にも最近出て来た眼圧を最も下げる効果が強いと言われているPG関連薬(プロスタグランジン)があります。色々ある薬を、うまく組み合わせることによって、眼圧を下げるという治療がされています。これらの薬は眼圧を下げるものや、眼圧を下げて循環を良くする薬が含まれています。この中には世界で初めて神経保護、視野の改善が証明されたと言われる薬があります。

 ご質問にあったデタントアルファーワン遮断薬(α1受容体遮断薬)この薬も眼血流(眼の中の血の流れ)を多くして神経の障害を予防する目薬になりますので、正常眼圧緑内障の方にはよく使われている薬です。血管がよく開いて血流が良くなります。

 チモプトールというβブロッカーが今まで足されていなかった目薬や、PG剤の一番初めに出たキサラタンという目薬では凄く濃度を上げないと血管が緩んでこないと言われていますので、この薬が正常眼圧緑内障によく使われます。

A手術治療

 眼圧をある程度下げても、視野変化が進行する方は手術治療が必要になってきます。大きく分けると、元々水が流れるところを、もう一度作り直す流出路再建術という方法と、濾過手術と言って、別のバイパスを作って眼の中から眼の外に水を直接排出する方法があります。

 ゴールデンスタンダードというか最もよく行われている緑内障の手術は、どんな病型の緑内障の人にも良く効きます。眼圧がうまく下がれば10以下にコントロールすることができるので、いい手術です。

 しかし、手術には良いところと悪いところがあります。眼の中から眼の外に水を漏らすと、水膨れができて、この水膨れを介して水が排出されていくのですが、ここにバイ菌が入って、眼がだめになるということも言われています。もろ刃の剣を持った手術だと思います。ただし、今はこの方法しかないので、眼圧や視野の変化がどんどん進む方に関しては、この手術を行うことになります。
B緑内障の予防について

 原発の緑内障は、予防法はありません。続発の緑内障であれば予防法は、例えばその病気を治療することによって無くすことができますが、原発の緑内障は予防法が無く、進行すれば回復することがありません。

非常に悪い状態で発見された場合、そこから治療をしていっても失明を予防することができません。早い状態で見つけて、進行の速度を緩やかにすることで、見える視機能を維持する。早期発見、早期治療を開始することが、非常に大切になってきます。
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