「知っているようで知らない緑内障」

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2015年第50回東海懇話会講演
知っているようで知らない緑内障」

 大阪医科大学眼科教授 植木 麻里先生

 

 今日は「網膜剥離友の会」ではありますが、緑内障という耳では聞いて知っているのだけれども、どんな病気と聞かれると、白内障とどう違うの? 緑内障になったらどうなってしまうの? と聞かれると答につまってしまう緑内障についてお話しさせていただきます。

 まず、今日のお話の内容ですが、5つに分けて

・ものを見る仕組み
・緑内障ってどんな病気?
・緑内障といわれたら(検査編)
・緑内障といわれたら(治療編)

 そして、緑内障は本当に怖い病気なのかという項目でお話いたします。
【ものを見る仕組み】
 眼球は人間にとってカメラのようなところですが、造りも大体同じようなものです。
まず、一番前が角膜といって、目の中と外を区別する透明な膜があります。その後ろに茶目があり、真ん中に孔が開いています。茶目を虹彩といい、

 真ん中の孔を瞳孔と呼びます。瞳孔は明るいところで縮んだり、暗いところで開いたりすることで、光が目にはいる量を一定にする絞りの役目をします。そしてその後ろに水晶体、これはピント合わせをするレンズです。このレンズがくもってくる病気が白内障です。

 そして、一番後ろが網膜といって、光を感じる場所、すなわちフィルムに当たるところになります。光が目に入ってくると角膜を通過し、虹彩の真ん中の穴、瞳孔を通って水晶体に光は到達します。水晶体では光を網膜に集めるようにピント合わせを行います。

 網膜に集められた光は視細胞で、光の情報を電気の刺激に変えます。網膜内で細胞をいくつか乗り換えながら神経節細胞(神経線維)に情報を伝え、その神経線維は視神経乳頭に集まります。

 視神経乳頭部で神経線維は眼の形をつくっている強膜を貫き、目からでて視神経となり、脳に到達します。それは脳の中で交叉し、左右の眼球から得た情報を合わせ、右の方で見えた情報は左の脳の中を、左の方で見えた情報は右の脳の中を縦断し、脳の一番後ろになる後頭葉というところで、どんなものを見たかという調恥識をすることになります。

 物を見るという仕組みを知っていただいたうえで、緑内障とはどんな病気なのかというお話しに移ります。
【緑内障ってどんな病気】
 緑内障は新しい病気ではなく、ギリシャ時代から認識されていました。この写真は赤ちゃんのときから緑内障になってしまう先天緑内障のお子さんの写真ですが、大人でも緑内障が進行してしまうと、角膜が混濁してしまい、このように青白くなります。

 ギリシャ語で、雲に覆われたと表現されており、英語では、うつろな目という意味であり、中国では青光眼、日本では青と緑が混同されることが多いため、青そこひや、緑内障と言われます。ちなみに、白内障は瞳が白くなって見えなくなるので白そこひ、神経や網膜の病気で見えなくなった場合には、瞳が黒いまま見えなくなるので、黒そこひと呼ばれていました。

 緑内障診療ガイドラインでは「緑内障は視神経と視野に特徴的変化を有し、通常眼圧を十分に下降させることにより、視神経障害を改善、もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」と定義されています。

 平たくいうと、眼圧により視神経が障害される病気なのです。
眼圧とは眼の硬さを表します。眼圧は毛様体というところから房水という水が作られ、それが水晶体や角膜に酸素や栄養を与え、虹彩と角膜の間の隅角というところから排出されるという循環があり、調節されています。この流れが何らかの原因で、不具合を起こすと、眼の中に水がたまり、眼球がパンパンに張ってきます。この状態を眼圧が高いと表現します。

 眼圧が高いと、眼球内の組織に圧がかかります。
先ほどお話しした視細胞からでた視神経線維が、眼球の後部で屈曲して出ていきますので、このような場所に圧がかかると、視神経線維が断裂し、目で感じた情報を脳に伝えることができなくなり、見えないところがでてきます。これが緑内障です。

 これは正常人の視神経で、こちらは進行期の緑内障患者さんの視神経ですが、視神経線維が少なくなったために、視神経乳頭陥凹が大きくなり、縁が薄くなっています。正常な人では上下120度、左右160度の広さの見える範囲があります。しかし、視神経線維がどんどん断裂していくと、見える範囲が徐々に欠けていき、末期になると日常生活が不自由になります。
【どのくらいの方が、緑内障になってしまうのでしょうか?】
 平成12〜14年に、多治見市というところで疫学調査が行われました。
40歳以上の方に市民検診を受けていただき、日本全体で緑内障の方がどのぐらいおられるのか推察しようというものです。その結果、40歳以上の約5%が緑内障という病気にかかっておられる。これは年とともに割合はどんどん増え、70歳以上では12〜3%が緑内障、ほぼ7.5人に1人が緑内障になっているということがわかりました。

 また、緑内障にはいくつかの分類があります。眼圧が高くなる機序が異なると、治療もことなってきますから、少し詳しくお話しします。

 緑内障には眼内の房水を流出する隅角というところが開いているか、閉じているかで大きく分かれます。他に原因がなく、緑内障を発症するものを原発、他に原因があって発症するものを続発と分けます。そして生まれつき緑内障である発達緑内障があります。
【原発開放隅角緑内障】
 もっとも緑内障の中で多いのは、隅角が開いている原発開放緑内障です。この中には眼圧が本当に高い、原発開放隅角緑内障(狭義)と、眼圧は正常範囲なのに視神経が何らかの原因で(これはまだよくわかっていませんが)弱いために緑内障の変化がでてきた正常眼圧緑内障があります。

 正常眼圧緑内障は、実は他の国よりも、日本に多いと言われており、例えばハワイでも日系人に多いため、遺伝などの関与も示唆されていますし、日本人に近視の方が多いことや、血圧が高い方が多いことから、眼球の形や血の流れが悪いなど、眼圧以外の原因として推察され、以前は正常眼圧緑内障と、眼圧の高い緑内障は別々に分類されていました。

 しかし、1998年にアメリカで行われた調査で、正常眼圧緑内障であっても、眼圧を下げれば、視野障害が進まなくなることが明らかになってから、同じ疾患として認識されるようになりました。

 原発開放隅角緑内障を発症し、悪化させる危険因子としては、まず、眼圧が高いこと、正常眼圧緑内障においても、眼圧が高い方が進行しやすいと言われています。高齢の方が発症しやすく、ご家庭に緑内障の人がいるのは危険性が高いといわれています。

 また、日本人に正常眼圧緑内障が多い原因の一つとして、近眼の割合が多いことも言われています。眼圧以外に血流が関与しているという説もあり、低血圧や逆に高血圧なども危険因子と言われています。
【閉塞隅角緑内障】
 次に多いのが、隅角が狭くなったために、眼圧が高くなった閉塞隅角緑内障です。40歳以上の0.6%に見られます。

 この中には徐々に隅角が閉塞して眼圧が上昇するものと、急激に隅角が閉塞することで起こってしまう急性閉塞隅角症があります。閉塞隅角緑内障は器械的な閉塞が原因ですから、閉塞をなくすということが治療の基本となります。例えばレーザー光線で虹彩に孔を開けて、そこから房水を流すようにする周辺虹彩切開術です。隅角の閉塞が解除されても、眼圧が高い場合には、開放隅角緑内障に準じて治療が行われます。
【急性緑内障】
 これは現在急性原発隅角閉塞症と言われますが、急性とつくだけあって、突然起こる眼圧上昇です。通常は21mmHgまでの眼圧が40〜80mmHgまで上昇します。症状として眼の痛みがあり、頭痛、吐き気が強く、症状が強いため救急車で運ばれてくる方も多く、内科や脳外科の病気に間違われることもあります。

 充血と瞳孔が中等度散瞳することが特徴です。50mmHgを超える眼圧が一週間も続くと全く見えなくなってしまうこともあり、眼科の中で緊急治療を要する疾患の代表です。急激に起こるため視神経障害は軽徴であり、早期に隅角の閉塞を解除してしまえば、後の治療が全く不要になることもあります。

 閉塞隅角緑内障の危険因子は瞳が開くような精神的ストレスや、暗いところでうつむいて本を読んだり、抗コリン作用をもつ薬を飲んだりすることで、起こってきます。風邪薬や睡眠薬などが、緑内障禁忌とされているのはこのためです。

 開放隅角緑内障はやや男性に多いといわれていますが、閉塞隅角緑内障は圧倒的に女性に多く(約2倍)、東洋人に多いといわれています。東洋人の女性は体も小さく、眼球も小さいため相対的に隅角も狭くなるためだといわれています。
【続発緑内障】
 次に続発緑内障ですが、40歳以上の0.5%に認められます。他の病気が原因で起こってくる緑内障で、炎症産物などによって線維柱帯という房水を濾している網目が目詰まりした開放隅角と癒着などによって隅角が閉じてしまった閉塞があります。

 続発緑内障の場合にはもとの病気の治療が第一になります。炎症によるものであればステロイドの点眼など消炎。糖尿病網膜症などの眼虚血によるものであれば、レーザー治療などで虚血の改善を行います。続発緑内障は緑内障で10%程度ですが、眼圧を下げることが難しい症例が多く、手術になることが多い病態です。

 また、続発緑内障の中に、網膜剥離に続発して起こってくるシュバルツ(Schwartz)症候群というものもあります。これは網膜の裂孔部から視細胞が、房水の流れによって隅角を目詰まりさせることによって、眼圧が上がるというものです。網膜の端っこに裂孔があると、房水の流れに視細胞が流され易いために、外傷などによる網膜剥離に多く、若い男性に多いと言われています。

 これも網膜剥離が治れば眼圧は下がります。
【発達緑内障】
 最後に発達緑内障です。発達緑内障は生まれつき房水を排出する隅角の発達が悪いために眼圧が高くなるもので、生後早期に発症し、柔らかい眼球が大きくなってしまう早発型(黒目の比率が高くなるため牛眼と呼ばれます)と、その後二歳以降に起こる遅発型があります。

 早発型では目の大きさが変わってしまうため、親御さんも気づきやすいのですが、遅発型では、外から見た目が変わらないため気づかれにくく、見えなくなってしまうこともあります。

 他の先天異常を伴う発達緑内障(例えば風疹などによるもの)などがありますが、発達緑内障は1万人〜1万2千人に一人に発症する比較的稀な疾患です。治療は子供さんでは点眼による眼圧降下が難しいことから、まず手術を選択することになります。
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