「加齢と目の病気」

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2015年第8回中国四国懇話会講演
「加齢と目の病気」

 みなもと眼科院長 皆本 敦先生

 今日は「加齢と目の病気」というお話をさせていただきます。

加齢に伴う目の病気ということで、全部お話ししている時間が無いので、「網膜剥離友の会」ということで、網膜剥離に絡めながら、いくつかの病気の説明をさせていただきます。
●眼の構造
 眼は視覚器のことを言います。こちらを参照して下さい。
大きくは付属器であるまぶた、目、を動かす筋肉と眼球という組織があります。

 普通目と言ったら、眼球のことを捉えますが、漢字の成り立ちを考えても目というのは、実はまぶたも眼球も含めた名称になります。眼球の眼のほうは主に眼球自体を指します。

 今日は眼球の中でも内容物、網膜、水晶体、その後ろにある硝子体に起こる年齢に伴う(加齢)病気について説明させていただきます。
●水晶体
 水晶体は眼の中にあるレンズで、黒目(角膜)は眼の表面にあるレンズです。そして、眼の中にある水晶体と、眼の表面にある角膜という2枚のレンズを使って、我々は焦点を合わせて見ています。

 水晶体は袋に包まれたレンズで、水晶体の嚢(カプセル)と言います。水晶体嚢に包まれた中に内容物があります。その嚢の表面に毛様小帯という蜘蛛の糸のようにすごく細い靭帯が無数についていて、それが眼球の中で水晶体をこの位置に固定しています。
●白内障
 白内障という病気は、水晶体が、濁ることをいいます。必ずしも白く濁るとは限らず、進行すれば、黄色、黄褐色、茶色、褐色に濁ることもあります。初期から中期まで、白濁した像を示しますので、白内障、白ソコヒと呼ばれます。

 正常な水晶体は透明で、核という部分と皮質があります。例えば桃の薄い皮がカプセルと考えていただくと、中央部に種があり、そこは核と考えて、果肉の部分は皮質にあたります。核も皮質も両方濁るのが白内障です。
 検査
 眼科に行くと「顎を乗せて、おでこを前に付けてください」と言われると思いますが、細隙灯顕微鏡検査という顕微鏡検査で、眼の中の状態を見ます。顕微鏡なので、すごく小さなところまで見えます。

 実際白目(結膜)の表面にある毛細血管の赤血球が動くのを拡大して見ることができるぐらいの解像度があります。細隙灯顕微鏡は細い光のスリットで組織をスライスして観察することができます。

 白内障の方とそうでない方を比べると、12才のころは、水晶体を光で切ってみると、ほぼ透明な色をしています。ただ水晶体というのは無構造ではないので、皮質の部分と、核の部分の境界が、何となくこの年齢でもわかることもあり、あるいは繊維状の構造が見えることもあります。

 92才ぐらいになりますと、核の部分が黄色く硬くなっている状態で、皮質の部分も何となく白っぽく黄自色に濁っています。後ろのカプセルの近くも、点状の混濁がたくさん集まって、円盤状の混濁という濁りができています。これが白内障です。
 原因
 正常な水晶体は透明なので、光が充分通ります。レンズは光を通すだけでなく、凸(とつ)レンズなので、光を曲げて集束させる方向に働いて、眼の底に焦点を合わせることができます。

 水晶体が濁ると、光が通り難くなって、眼の底ではぼやっとした像しか結べません。そうなると、光がたくさん入らないと見えにくいということになります。水晶体は年齢に伴なって濁るのですが、どの程度どこが濁るかということは、個人差が大きく、その人の遺伝的要素や環境的な要素です。

 例えば、紫外線をたくさん浴びる人と、そうでない人では、紫外線をたくさん浴びた人のほうが白内障は進みやすいです。そして、放射線です。被爆者の方は放射線を浴びたことが白内障のリスクファクター(危険因子)のひとつです。

 その他ある種の薬、ステロイドと呼ばれるような薬です。例えば喘息、リウマチで、ステロイドの薬を飲んでいる方は白内障が進みやすく、眼圧も上がりやすいという副作用もあります。

 色々な要素でなりますが、皆一様になるのは個人差なく、年齢と伴に水晶体は、濁って、硬くなって弾力が失われていきます。
 症状
 水晶体は、遠くを見るときは薄くなって、近くを見るときは厚みを増してピントを合わせます。若いころの眼は、オートフォーカス(自動的にピントが合う)です。遠くを見ていても、すぐ手元を見ても、すぐに焦点が合います。しかし、だんだん水晶体が硬くなると、オートフォーカス機能が損なわれてきます。いつ頃から老眼になるかといいますと、実は十代中盤から弾力は落ち始めています。

 ピント合わせをする力を調節力と言います。調節力は10代後半から80代まで着々と落ちていきます。調節力Bというのは距離の逆算なので、その人が近視、遠視が無く、遠くが良く見える眼ならば、13分の1で、目の前8pのところまでピントを合わせることがで
きます。

 20才のころの調節力10というのは、10pのところまで、遠くからピントが合わせられます。15〜20才まで調節力はもう落ちているのですが、近く(近点)が8pでも10pでも、日常生活には大した問題が無いので、20才の人が15才のころに比べて近くが見えなくなったと思う人はいません。

 ところが、ちょうど40代前半ぐらいで、調節力が3〜3.5ぐらいに落ちてきます。そうすると、目の前30pぐらいでしかピントが合いません。40代過ぎたときにもっと近くに寄せて良く見ようと思ったときに、逆に見え難くいことを初めて感じます。これが老眼です。調節力低下(眼の老化)は10代から始まっています。

 70才、80才ぐらいになると、調節力はゼロ近くになるので、焦点が合うのは、わずかな範囲になります。ですから、ある程度の年齢になると、遠近の眼鏡も、中近の眼鏡も要り、近くを見るため老眼鏡も要るということになります。若ければ遠くも近くもはっきり見えますが、老眼(老視)になってくると遠くははっきりしていますが、近くは見え難くなってきます。

 白内障はこれにプラスして、光が入り難くなってくるので、霞んで見えたり、遠くがぼやけたり、眩しいなど色々な症状が加わってきます。

 白内障も色々あって、水晶体の中の核と皮質の境目が濁っているもの、皮質に比べ核が白っぽく濁っているもの、皮質も核も全体的に白くなっている白内障もあります。

 皮質の白内障は進んでくると、果物が熟すように果肉(皮質)の部分が水っぽくなって、種(核)が沈んで袋の中に落ちてきます。進行すると、ここまでくることがあります。こうなると目の前で光を当てたかどうかぐらいしか判断できない状態です。ここまで放置されることは、最近は少なくなっています。
 治療
 濁りがあるので取らなくてはいけません。60〜30年前は、濁った水晶体を全部摘出する手術をしていました。基本的には眼の中のレンズを1枚取って、それに替わるレンズとして、凸(とつ)レンズの分厚い眼鏡を掛けるか、コンタクトレンズを使うという方法で対応していた時期がありました。

 私が眼科医になったのは30年近く前ですが、そのころの広島大学病院の白内障手術の、約半数はこういう方法で行われていました。今はほぼゼロです。

 20年ぐらい前から盛んになったのは、嚢外摘出といって、袋を残して、中の核と皮質だけを取ってしまいます。これは何が良いかというと、袋を残すと、そこに替わりのレンズを入れることができます。レンズの品質、レンズを入れる技術、袋を残す技術によって、近代的な眼内レンズを入れる白内障手術が盛んになってきました。

 今は核を取り出すというより、中に器具を入れて、そこの中で砕いて吸引してしまうので、かたまりを取り出す必要がありません。ですから切開する大きさが、小さくて済むので、入院がほとんど必要無くなったのが現在の状態です。
 超音波乳化吸引術
 今の手術を超音波乳化吸引術と言います。水晶体が硬くなっていることが多く、そのまま吸い取ることができないので、超音波を発信させて吸い取っていきます。イメージとしては、古いお餅ぐらいの硬さのものを、超音波でお粥のような状態にして、吸い取ってから、袋(カプセル)に穴を開けて、中身を取り出してレンズを入れるという治療です。

 レンズの度は色々あって、その人の黒目の曲り具合、眼の大きさなど色々な要素を計算してその度を決めていきます。

 白内障の手術ですが、袋(カプセル)に2.5〜2mmぐらいの幅の切開をして、超音波を発信しながら硬い水晶体を砕いて、中身を吸い取ります。スピードが早くて、砕いた状態が見えないので、そのまま硬いものを吸い取っているように見えます。そして中身が無くなって袋だけが残ります。中央部の硬い部分を吸い取り、次に周りの果肉部分の柔らかい部分を吸い取ります。

 吸い取っていくと、光が眼の底に当たって、反射して明るいオレンジ色が眼の底から返ってきます。レンズを入れるときは、小さい創から入れられるように、畳んで入れて中で拡げます。レンズは自ら支えがないといけないので、そこに二つの把手が付いていて、袋の中で支えています。これが白内障手術です。

 単焦点レンズと多焦点レンズ最近の話題としては、単焦点レンズと多焦点レンズがあります。単焦点レンズは、濁った水晶体を置き換えて、例えば焦点を遠くに合わせれば、近くを見るときは老眼鏡を使います。また室内の暮らしが多いので、近くを見ることを優先したい人は、近くに焦点を合わせれば、遠くを見るときは眼鏡かコンタクトレンズを使ってくださいということです。

 多焦点レンズは遠くも近くも眼鏡無しで見たいという方のためのレンズです。レンズ自体が本来の水晶体のように厚みを変えてくれるわけではなく、遠くを見る、近くを見るということを使い分けることができるように、レンズに溝を作って、遠くと近くに焦点を合わせることができる構造になっています。

 ですから全てが素晴らしいというわけではなく、構造的に一定のギラつき、光に対する眩しさという不利益なところもあるのですが、ギラついて物が見えないというようなレベルではありません。

 一番のデメリットは、単焦点レンズは保険が適応されますが、多焦点レンズは保険が適応されません。全て自由診療なので、数10万円掛かってしまいます。
 アドオン(Add-On)レンズ
 もう一つアドオンというのがあります。昔は単焦点レンズが手術で入っていて、今は多焦点があるので、眼の構造によっては元々の単焦点レンズが入った上に、もう一枚多焦点の機能を持った物を付け加えて、多焦点にするというレンズが最近は出ています。

 もちろんこれも保険の適応はありません。ただ以前手術して、特に加齢性の変化として、乱視が強くなってくることがあるので、その乱視部分が何とかならないかということで、乱視部分を追加するレンズがあり、それは保険の範囲内で可能です。色々な選択肢があります。
 日帰り白内障手術
 数10年前から比べると、眼内レンズは発達してきました。しかし、最初は、眼内レンズは折り畳めないレンズでしたので、傷口は7〜8mmという大きなもので、日帰り手術も一般的ではなかったのです。

 現在は傷口が2〜3mmという小さなものになって、縫合の必要もなく、手術時間も白内障の状態によって違いますが、一般的な白内障の手術時間は10分〜20分ぐらいです。白内障手術の施設に行っていただいて、手術している時間は10分〜20分ですが、その前後で準備などあるので、在院時間2時間程度で手術が可能な施設が増えているのが現在の状態です。
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