2016年東海懇話会講演

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2016年東海懇話会講演
「眼疾患と食生活」

 大阪医科大学講師 植木 麻里先生

【眼の構造と機能】
 眼はよくカメラにたとえられますが、一番前に角膜という透明な膜があり、これはカメラのガラス板にあたります。その後に虹彩という茶目があり、真ん中に穴が開いているのが瞳孔です。(こちらを ご覧下さい)

 瞳孔は絞りに当たり、目の中に入る光の量を調節しています。その後ろ側にピント合わせをするレンズにあたる水晶体というレンズがあり、一番後ろがフィルムにあたる網膜という神経の膜があります。網膜には光を感じる視細胞があり、視細胞からは感じた情報を脳に伝えるための視神経線維があります。視神経線維は眼球の後部で集まり、視神経となって脳につながります。

 網膜には真ん中の黄斑部という最も見るのに必要なところがあり、錐体細胞という非常に感度のよい細胞が集まっています。周辺部の網膜には桿体細胞という感度の低い神経細胞が並んでいます。視力というのは真ん中の黄斑部で評価しています。

 眼の中に入ってきた光は瞳孔を通り、水晶体により網膜に光を集め、網膜の視細胞が光を感じて、感じたことを電気刺激に変えます。その電気刺激が電線のような神経線維に乗って脳の中に入って行きます。

 そこで右眼と左眼の視交叉というところで神経が交差して、ここで両方の眼で見た情報が合わさります。それが外側膝状体を経由して、最後には後頭葉の視中枢まで行きます。非常に長いところを通って、眼は見たものの情報を脳に伝えています。
【視力低下を来す原因疾患】
 このどこが病気になっても視力は落ちます。2002年の日本において視覚障害の身体障害者が、どんな眼の病気が原因であったかを調べられましたが、緑内障が一番で24%、次に糖尿病網膜症20%、加齢黄斑変性症が11%、その後は視神経萎縮、自内障、強度近視となっています。

 1990年代に調べたときには、糖尿病網膜症が一位で、緑内障が二位、加齢黄斑変性症はまだ出てきていませんでしたが最近では三位に上がってきて注目される病気になっています。
 
●緑内障
 緑内障とは緑内障ガイドラインによると視神経と視野に特徴的変化を有し、通常眼圧(眼の硬さ)を充分に下げることによって、視神経の障害を改善、もしくは抑制しうる眼の機能的、構造的異常を特徴とする疾患です。緑内障は眼の神経の病気です。
○緑内障の原因
 眼はボールのような形をしているので、一定の硬さを保つために毛様体という茶目の後ろ側から水を作って、茶目の前側から水を排出し、水を循環することで、一定の硬さを保っています。それが何らかの原因で流れが悪くなると、眼の中に水が溜まって、ボールの中に水を入れ過ぎて硬くなったような状態を、眼圧が高いと表現します。

 そうなると、眼の中の網膜から出てきた神経線維が眼球の一番後ろで一度屈曲して硬い節状板を通っていくのですが、ここで圧迫されることになり、眼を繋いでいる電線が切れていきます。切れてしまうと折角物を見ても脳に伝えることができないので、見えないところができてきてくるというのが緑内障です。
○緑内障罹患者の割合
 多治見スタディーという岐阜県多治見市(日本で標準的な市民構成)の市民40才以上4,000人程ピックアップして、緑内障が何才ぐらいの人にどのくらいいるか調べました。

 その結果それまで緑内障の罹病率は3.5%と言われていたのですが、実は40才以上で5%いるということが分かりました。

 そのうえ40才ぐらいでは2.3%ですが、70才を超えると13.1%というように、10人に一人を越えて緑内障の患者さんが出てくることも分かりました。また、日本人は近視が多いことや神経が弱いことで眼圧が正常でも視神経が障害され緑内障となることが多いことも明らかになりました。
○視野の変化
 視神経乳頭には光を感じる細胞がないので正常な人も神経の出口は見えないところ(マリオット盲点)となります。

 緑内障のごく初期では、少し上の方が見にくくなり、中期になると上から障害されて、上半分のところが水平に見えなくなってきます。末期では真ん中は見えず、横が少し見える程度になってしまいます。

 緑内障は神経の病気で、眼の中の神経は脳と同じような細胞でできていて、それは一回障害されると治りません。一回切れてしまうと、もう戻りませんが、人間は眼が二つあるので、初期に見えないところがあっても気付く方はほとんどいません。中期もしくは後期になって、初めて見えないと気付くことになります。

 先ほどの多治見スタディーで、40才代以上の5%が緑内障だったのですが、そのうち80%の方が、緑内障という診断をされたことが無く、治療も受けていませんでした。緑内障は進行が緩やかで、急激に進行する病気ではないにもかかわらず、気がついたときには見えにくくなってしまっていることが多い病気です。
○緑内障の治療
 緑内障の治療は眼圧を下げることが基本です。まずは目薬で眼圧を下げます。目薬で眼圧が十分に下がらなかったり、眼圧を下げても視野が狭くなっていく場合には、より眼圧を低く下げるために手術が必要になります。
○緑内障の予防
 残念ながら原発緑内障(一般的な緑内障)の予防方法はありません。緑内障は進行すると回復することは無いため、早期に発見して、早期に治療を開始することが大切です。進行した状態で発見されれば、より侵襲の大きい治療をしなければいけません。早期に見つかれば、緩やかに進行しても、例えば九十才になっても、全く見えなくなっていなければ問題ありません。今は、40才を過ぎたら、年に一度は緑内障の眼科検診を受けてくださいと言われています。

 先日グリーンライトアップ運動(世界緑内障週間)で、緑内障治療の啓蒙を進めるため緑色のライトアップをして、緑内障学会も頑張っています。近眼、高血圧、家族歴もリスクです。緑内障の疑いがあると言われても、何にもしないで放っている方がいたら、必ず眼科を受診するように勧めてください。
 
●糖尿病網膜症
 永らく日本では失明原因の一位を占めていた糖尿病網膜症ですが、手術、治療の進歩によって二位になりました。糖尿病網膜症は血糖が高いことで網膜の細い血管が少しずつ損傷を受けて、血が正常に流れず、酸素が行き渡らなくなることで起こってきます。

 低酸素状態により新生血管が生えたり、増殖膜が形成されることで病気が起こってきます。新生血管は脆いために容易に出血を起こし、増殖膜の牽引によって網膜剥離が起こることがあります。

 糖尿病の患者さんは、日本では740万人を超えて800万人と言われています。その800万人の方が10年糖尿病に罹っていると、半分の方が糖尿病網膜症を起こしてきます。そして20十年を経ると、それが増殖型になっていく方が20〜30%、年間約3,000人の方が失明するという病気です。
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