2016年中国四国懇話会講演

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2016年中国四国懇話会講演
「加齢と目の病気ー加齢黄斑変性を中心に」

 みなもと眼科院長 皆本敦先生

 皆さんこんにちは、皆本と申します。大学を卒業して眼科医になって30年経ちます。20年勤務医を、その後10年、今のクリニックで仕事をしています。勤務医のころから網膜、眼底の病気を担当していたので、以降8年間お話をさせて頂いています。

 網膜剥離は、手術によってかなり治る病気になってきたのですが、今日は高齢の方に増えていて、眼科の臨床の中でも中心的病気の一つ、加齢黄斑変性について、まだまだ色々な問題があるということでお話し、そして白内障、網膜剥離のお話しをいたします。
眼の構造と機能
 我々眼科医が眼と言うときは、目の玉だけでは無く、眼球付属器の瞼や涙道も含めて眼と言います。今日は眼球のお話しです。(眼球の構造は、こちらを参照して下さい)

 眼球は視神経が後ろに付いていて、眼球で得た情報を、視神経を通して頭のほうに伝えます。眼の中には水晶体というレンズがあり、硝子体という光を通すための透明な部分があり、眼の底、眼球の裏側には神経の膜が張っていて、これを網膜と言います。

 網膜の中心部を黄斑と言い、さらに、そこの中心部分を中心窩、窩は窪みということで、中心は少し窪んでいます。

 眼はカメラに例えられますが、カメラは眼球を参考に設計された器械で、カメラのレンズに当たる部分は角膜水晶体です。

 フィルムに当たる部分は網膜です。フィルムと網膜は、光を受け取って映像化する役割は同じですが、フィルムは各部分が同じ感度で作られていて、網膜は中心部分が、物の形や色に対して鋭敏で、周辺部は感度にバラつきがあります。

 左眼の網膜を前から見ると、眼の底に付いている視神経の出入り口の視神経乳頭が、中心から左の鼻側にあります。黄斑は網膜のほぼ真ん中にあって、物の細かい部分や、色を見分ける働きを持つ細胞が集中しています。

 黄斑の中心にある中心窩は、物が最もよく見えるところです。網膜には、光を受け取る視細胞が二種類あって、桿体細胞(Rod cell)、錐体細胞(Cone cell)があって、それぞれ役割が違います。

 桿体細胞は眼の底の中心部には無く、周辺部にたくさんあり、明暗を見分け、暗闇に慣れる働きをしています。錐体細胞は、比較的明るいところで色を見分け、字が読めるという働きをしていて、眼の中心の黄斑に存在しています。

 字を読んだり色を見分けるときは、見つめて見ますが、そのときは眼の中心の錐体細胞を使って判断しています。逆に暗闇では中心部分の細胞はあまり働いていませんが、周辺部分が明暗を判断します。

 例えば夜道でも障害物を判断して動くことができます。それぞれ機能の分担があり、中心窩には錐体細胞がたくさんあって、その周りに桿体細胞があります。分布が不均一で、カメラのフィルムとは違います。視力は錐体細胞が働いて物の形や色を見分けています。
● 加齢黄斑変性
 加齢は歳をとることで、黄斑は物を見る一番大切なところで、そこが変性するということです。

 例えば、元々持って生まれた体の一部がうまく出来ていないのは、形成不全また低形成と言いますが、変性というのは、一度ちゃんと出来上がって正常に働く機能を持ったものが、何らかの原因でその機能が損なわれ失われていくということです。

 欧米では成人の失明原因の第一位です。10年以上前のデータですが、アメリカでは約175万人で、全人口の200人に1人、高齢者ではもっと頻度が高いです。視力が短期間で急激に低下して失明に至ることも多いです。

 失明といっても、医学的に完全に光を失う失明ではなく、黄斑の病気ですから、色や形を判断することができなくなり、活動に支障をきたす社会的失明という状態です。これは日本でも増えています。

 1998年に九州福岡の久山町研究という、成人病に関してフォローアップしていく研究ですが、1998年には0.9%しかなかったのに、2007年には1.3%、と10年後には増えています。

 日本では滲出型加齢黄斑変性は、推定70万人で、200百人に1人以上の頻度です。久山町研究でわかったことは、喫煙が大いに関与していることです。そして増加の原因は、人口の高齢化、生活様式・食生活の欧米化、高脂質・高たんぱくの食生活、体を使う労働の減少など生活様式の変化が関連していると推察されます。
【タイプ】
 加齢黄斑変性は大きく分けてウエットタイプ(滲出型)とドライタイプ(萎縮型)という二つのタイプがあります。

 主に問題になるのはウエットタイプです。ドライタイプは、黄斑が萎縮して枯れていきます。視力は低下しますが、進行は遅くゆっくりです。日本人は少なく、欧米の方には多いです。
・ ウエットタイプ
 日本人はウエットタイプが主体で、早期から症状が出やすく、中心の視力を失う人の大半がこのタイプで、病気が活動し始めると、急激に視力が低下します。

 ゆっくり低下するのであれば病気を理解して対処することもできるのですが、急激に真ん中が見えなくなるので、困ったことになります。

 ある日突然破壊的なことが起こるのでは無く、眼底を見てみると、何となく白っぽい部分が出て来ていたり、オレンジ色が正常な眼底ですが、そこが黄色や白くなり、色むらが出てきています。

 これが前駆症状なのですが、病気が始まると、出てきた水分が溜まり、網膜が水浸しになって赤い物が出て、眼底出血を起こします。「滲出」は滲み出ることで、ウエットタイプです。
・ ドライタイプ
 萎縮型、乾いたタイプは、色むらができて働きは落ちていますが、水膨れや出血は起こしていません。
【眼底写真で見える病態】
 
 正常な眼底写真(24歳女性)と比べると、正常な眼底は赤味がありテカリがありますが、54歳ではテカリが無く暗い感じがします。動脈が均一ではなく、細くなったり太くなったりしているのは動脈硬化が始まっています。

 眼底を見るとだいたい年齢がわかります。60代で加齢黄斑変性を発症している人の眼底写真は白っぽい物や赤い物が出ています。

 もっと詳しく見るために最近は光干渉断層計(OCT)という優秀な診断機器があって、網膜の断面をスライスして観察ができます。カメラで撮れば、黄斑の中心窩の察できるようになりました。
【滲出性加齢黄斑変性の病態】
 本来中心窩はなだらかに窪んでいるのですが、網膜が、眼の底の神経の膜の後ろ側から押されて盛り上がっています。

 眼の底はスクリーンですから、光が底に入ると平らならきれいに映るのですが、底がデコボコだと像もきれいに映りません。

 正常な眼底は、脈絡膜という膜の上に網膜が乗って、スムーズに像が映っているのですが、この写真の眼底は、盛り上がって、その下には血管が潜んでいます。

 この血管は新生血管と言って、加齢や色々なストレスが加わって、本来あるべきではない血管が、網膜の一番外側の網膜色素上皮という細胞層の下から出て来て、盛り上げてデコボコを作ってしまい、体と桿体という光を感じる細胞の下まで伸びて来ます。この血管は脆いので、かなりの頻度で容易に出血を起こすことがあります。これが病態です。
【進行過程】
 ブルッフ膜(網膜色素上皮の下にあり、脈絡膜との境目にある膜)は、年齢的変化で膨らんできますそれ自体は問題ではないのですがそこに向かって新生血管が伸びてきたら、異常の始まりで、それが破たんして出血が起こります。

 この状態が続くと、正常な網膜が盛り上がったり、出血で網膜が侵され破壊されて、視力が悪くなっていきます。
【症状】
・ 暗く見える

 部分的に、または中心が暗く見えます。

・ 物が歪んでくる
・ コントラストが低下する

 物の色の差が分かりにくくなる。眼底の中心部分に変化が起きるので、視力が低下して、視野の中心部分が見えず黒く抜けてしまいます。読もうとするところが見えないので、読めません。これらの症状が一度に起こってしまうと、正常な見え方ができなくなります。

【環境の原因】
・ 喫煙
・ 偏った食生活

 悪玉と呼ばれる脂質の摂取。高カロリー、高脂質の物を過剰に摂取することは良くありません。

【食生活の変化】
・ 運動不足肥満過体重
・ 高年齢日本人が長生きに
・ 白内障手術

 以前は人エレンズで、外からの強い光線がダイレクトに入り過ぎてしまったためですが、今は眼内レンズに紫外線を防ぐUVカットや、着色をしてリスクを減らして、これに対処できるようになりました。

【診断】
・ アムスラーチャート(格子状の図)

 初期の症状では、眼の底に段ができ、スクリーンが歪むため、見え方が歪みます。自覚的検査のために見るように工夫されています。

・ 視力検査

 以前より視力が落ちていないか。

・ 眼底検査

 歪みは他の病気でも起こりますので、眼科医が眼の底を詳しく診て、眼底写真を撮って診断します。

・ OCT(光干渉断層計)
【造影剤検査】
 タイプは滲出型か。急激に進行するタイプか、病気の勢いを判断。病変の範囲など直接眼底を診ただけではわからないものを、造影剤検査をします。

 蛍光色素フルオレセイン(FA)インドシアニングリーン(IA)蛍光色を発生させる色素を、静脈に注射して、眼底の写真を撮って、病変の広がり、病気の勢いを判断して診断します。
【サプリメント】
 ルテインを多く含んでいるブルーベリーなどサプリメントを長期服用すると、予防になるというデータもあると言われています。
 早期発見早期治療が大切なので、一番シンプルなアムスラーチャートを自分で見てチェックしてください。特に生活習慣病を持っていることは、加齢黄斑変性発症の危険因子になりますので、注意して早めに眼科医に相談してください。禁煙はとても大切です。そして、運動不足にならず、食事に気をつける。紫外線を避けるということです。
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