Q&A解説版

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  網膜ってどんなもの?
  網膜はカメラでいうとフィルムの役目をしています。外から入った光は、角膜を通り水晶体、硝子体を通って網膜に映し出されます。映し出された像は視神経を通って脳に伝わり、そこで「見えた」と認識されます。

 網膜の真ん中に白っぽくみえるのが「視神経乳頭」で脳に通じている視神経や血管の出入り口です。その真横に黒っぽくみえるのは「黄斑部」といって視力にとって大切なところです。

 1.2とか1.0という視力はここでしか得られなくて、ここをはずれると0.1以下の視力になってしまいます。
それでは網膜は黄斑部以外は必要ないかというとそんなことはなくて、黄斑部以外の広い部分はものの動きとか、明るい暗いの感じ、暗いところでの感度などを担っています。

 網膜の端(水晶体に近い方)はギザギザになっているので「鋸状縁」と呼ばれています。普通の眼底写真では突き当たりの部分を中心にある程度の網膜しか写りません。網膜剥離は写真にとりにくい端の方に起こりやすいのです。

 網膜を断面図でみると厚さはおよそ250ミクロンから300ミクロンで、一番薄い黄斑部は50ミクロンくらいしかありません。その上、網膜は10層から成っていて、10層のうち9層を占める神経網膜層と残りの色素上皮細胞層の二つに分けられます。
 網膜が剥がれるってどんな時にどんなふうになるの?
 網膜剥離は網膜に裂孔が形成され硝子体の液化した水がこの裂孔を通って網膜の下に溜まり、網膜が剥がれてくることによって生じます。なお網膜が剥がれるといっても、正確には網膜全部がその後ろにある脈絡膜から剥がれてくるのではなく、(1)で示した網膜の色素上皮細胞が神経網膜から剥がれてくるのです。

 人間の体ができる過程で眼球の内側と外側が貼り合わさったところが網膜の色素上皮細胞と神経網膜の間なので、ここはもともと剥がれやすい場所なのでしょう。

 どうして網膜に穴があくかというと、網膜の一部に硝子体がくっついていて網膜を内側に引っ張ってちぎるからです。赤ちゃんの硝子体はドロドロした均一な組織なのですが、年をとるに従ってドロドロした有形硝子体と液化した硝子体に分離してきます。

 さらに変性がすすんでくると、有形硝子体が網膜から離れて液化した硝子体が目の後ろ側(網膜の側)に溜まります。これを「後部硝子体剥離」といいますが、このとき網膜と硝子体が強くくっついている部分があると、硝子体に引っ張られた網膜がちぎれて裂孔になってしまいます。

 そして網膜側に移動していた液化硝子体がその裂孔から網膜の裏に入り込んで網膜を剥がしてしまうのです。色素上皮細胞の下にあるのが脈絡膜で、神経網膜の一番外側にある視細胞に栄養を送っています。そのため剥がれたままにしておくと栄養が届かないので視細胞は死んでしまいます。視細胞は脳の細胞と同じで一度死んでしまうと再生することはありませんから、視力を失ってしまうのです。
 飛蚊症ってどうして起こるの?
 飛蚊症の多くは硝子体の線維が網膜に影を落とすことによって生じます。特に後部硝子体剥離がおきると、有形硝子体の線維が影をおとしてはっきりとした飛蚊症を自覚します。後部硝子体剥離は一般的には40代後半から50代、60代に起こることが多のですが、近視が強いと20代、30代でも起こります。

 また外傷や炎症など目の病気になると後部硝子体剥離が起こりやすいと言われています。しかし後部硝子体剥離の全部がすぐに網膜裂孔や網膜剥離に直結するわけではありません。多くは加齢変化としてそのままの状態でおさまってしまいます。

 急に飛蚊症を自覚したので慌てて眼科に行ったら「後部硝子体剥離が起きただけですね」といわれた経験をした人をいると思いますが、網膜に変化を生じないことも多いのです。しかし網膜剥離の初期症状として最も多いのが飛蚊症ということも事実です。

 また硝子体が網膜を引っ張ってちぎったときに、ちぎれた網膜の部分の血管もいっしょに切れて出血することがあります。また網膜が切れなくても硝子体が網膜の血管に強く癒着していると、引っ張ったときにやはり出血をおこすことがあります。

 出血はすぐに止まることが多いのですが、血液成分は目の中に溜まってしまいます。硝子体はそのほとんどが水で、その他もコラーゲンとかヒアルロン酸など血液成分とは関係ない物質なので、出血すると吸収されるまでとても時間がかかります。したがってこの出血は濁りとなって硝子体中に残って網膜に影をおとすので、やはりはっきりした飛蚊症として自覚します。
 網膜剥離の手術ってどんなことをするのでしょう?
 網膜剥離の治療としては薬物療法などの内科的治療法はありません。必ず手術が必要です。

 手術の目的は、
第一に、この病気は網膜に穴があいているのですから、すべての穴を捜して確実にふさぐこと。

 第二に、剥がれた網膜、正確には神経網膜と色素上皮細胞との間にできた隙間をくっつけて剥がれない状態にすることにあります。現在一般に行われている手術法は「強膜バックリング手術」と、ここ十年ほどで広く行われるようになった「硝子体手術」です。

 バックリング手術は、まず裂孔がある網膜の外側にあたる強膜にシリコンを縫いつけます。すると強膜は内側に凹んで網膜の裂孔の部分を押し付けます。そこで眼球に鉢巻をするようにシリコンバンドを1周させて縛ります。

 眼球は形が変わって眼内の圧力が上がってきますから、強膜側から剥がれた網膜の隙間に針を刺すと、そこにあった水分は外に出ていって隙間はなくなり、網膜はもとの位置に戻ります。そこで二度と剥がれないように網膜裂孔の周囲にレーザー光凝固、冷凍凝固、ジアテルミー凝固などで火傷や凍傷をおこすことで瘢痕をつくり、網膜をしっかり癒着させるのです。

 次に硝子体手術です。バックリング手術は眼球の後ろ側の強膜から行いますが、硝子体手術は眼球の前の方から行います。
大変細かい作業なので必ず顕微鏡下で角膜側から眼底をみながら、目の中に入れた道具で硝子体をどんどん食べていきます。硝子体を取り去ったあと網膜に穴をあけて、その下に溜まっている水を吸い出し、同時に空気を入れて網膜を後ろに押し付けます。

 穴のまわりはレーザーで焼き付けて固め、眼内にガスを入れて網膜を押さえつけます。術後はガスが網膜を後ろに押さえつけることができるよう、うつ伏せの状態で1週間ほどすごしてもらいます。

 硝子体手術が登場して網膜剥離の治療は飛躍的に進歩しました。
どちらの手術を選ぶかは、裂孔の位置や大きさ、剥離の程度や範囲などを考慮して決めますが、重症の網膜剥離、また再手術の場合は硝子体手術で治療することが多いようです。
 レーザー治療はどんなときにするの?
 網膜剥離の手術の時に用いるレーザーの他に、単独でレーザー治療を行うことがあります。レーザー療法は網膜剥離だけでなく、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、黄斑変性症などの眼底疾患や、閉塞隅角緑内障などの治療に用いられ、現在眼科治療をする上でなくてはならない存在になっています。

 網膜剥離関連で単独にレーザー治療をおこなうのは、網膜に裂孔ができたけれどまだ網膜が剥がれていない場合です。角膜側から網膜の裂孔の周囲にレーザー光をあて、網膜とその下の組織を癒着させて剥離に発展させないようにするのです。

 単独のレーザー療法は外来でできますから入院の必要がありません。放置すれば剥離に発展することが多い網膜裂孔をこの時点でつかまえることができれば、術後も2〜3度の外来通院ですむことが多いのです。ただ裂孔周囲を補強しただけというわけですから、定期検診や自己観察は必要です。
 網膜剥離の予後は?
 網膜剥離を放置すると網膜はどんどん剥がれてきます。するとそれまで神経網膜に押さえつけられていた形の色素上皮細胞が目の中で自由に動き回って増殖し始めます。

 この細胞はどんどん増殖して網膜同士が引っ張り合う膜を作ったり、網膜の上に膜が張りついて皺を作ったりして、網膜をくちゃくちゃにしてしまいます。

 この状態を「増殖硝子体網膜症(PVR)」といいますが、治療が大変難しく硝子体手術でしか治せません。そして何とか解剖学的に治癒しても視力の回復が十分とはいかないことも多いのです。PVRになる前に、また視力にとって大切な黄斑部の網膜が剥がれる前に適切な治療を受ければ視力の確保もできるし、予後の悪い病気ではありません。

 ただ、裂孔原性網膜剥離は人口1万に対して年に1人起きるといわれていますが、再発もめずらしいものではありません。
再発というのは前回手術をした部分が再剥離することもありますが、それ以上に網膜の他の部分に裂孔が形成されて剥離がおきたり、反対側の目にもおこることがあります。

 また家族性滲出性硝子体網膜症などという遺伝性をもつ特殊なタイプもありますが、普通の裂孔原性網膜剥離でも親子や兄弟でおこることがあります。近眼などと同じように体質が似るのでしょうか。再発の場合も初期症状は全く同じです。
    
 この網膜剥離友の会が発足した30年程前は、網膜剥離は失明することもある病気として恐れられてきましたが、今では施設によっては100%近く、90%以上は治る病気です。しかしこの場合の治るということは解剖学的に網膜が復位することです。もと通りの視力を獲得するためには、早期発見早期治療が何よりも大切なのです。
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