2010年関西懇話会

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〈2010年関西懇話会〉
「質疑応答」
   
回答:大阪医科大学講師 植木麻里先生
【網膜剥離手術後、物が二重に見える】
 左眼をバックリング手術して、視力は0.6ぐらいです。プリズムで矯正できるかと思い検査したのですが、矯正できず、手術するしかないそうです。しかし手術するには眼に問題が多く、「今のまま慣れてもらうしかない」と言われました。実質右眼だけで見ている状態で視野が狭くなっています。
  主治医の先生が「慣れていただくしかない」とおっしゃっているそうですが、人間は適応能力が高いので、自分に邪魔な物は自然に排除してしまいます。バック
リング(眼の外側にシリコンスポンジを巻く)という手術をすると、眼の位置がズレてしまうことがあるのですが、最初は二重に見えていても、そのうち強い方の眼の
情報だけに、脳が反応するようになり、弱い方の眼の情報は、頭の中で脳が自然に消してくれます。

 不自由が無いのであれば、手術は勧めません。視野が狭い分は、顔を動かしながら見える範囲を広げていただくしかありません。普段左眼を使っていないからと言って、左眼の視力が悪くなる事はありませんが、見方を忘れてしまうので、視力検査をしてみるとかなり変動があります。

 例えば、一週間右眼に眼帯をして生活すると左眼が物の見方を思い出し、視力が上がることがあります。物が二重に見えると、例えば階段を降りるときには、階段がズレたり、ダブったりして見えます。そういう時に、脳がダブっているうちの片方を無い物として適応していくので、それに慣れるのが一番良いと思います。

 網膜剥離手術後に二重に見えている人は、二重であるうえに見え方の質が違います。質の違うものがひとつに重なっても辛いので、斜視手術をして眼の位置を戻すということは、考えないほうが良いと思います。今は様子を見ていただければと思います。
【網膜剥離手術後の斜視】
 半世紀くらい前、28才の時に右眼が網膜剥離になり、砂枕で固定され1ヶ月間入院しました。それから6〜7年後にガラスドアにぶつかって右眼を切り、1ヶ月後
飛蚊症が出てきて眼科に行きましたが、大丈夫と言われました。

 しかしその1ヶ月後、さらに異常が出て手術をしました。ジアテルミーというそうですが、眼の後ろ側に当て物をする痛い手術で、1ヶ月間絶対安静でした。その後、物が曲がって見えるようになり、斜視になりました。しばらくたってバックリング材が出てきたため取ってもらい、眼瞼下垂の手術もしましたが、斜視は治りません。

 子供さんの目に起こる生まれつきの斜視は、普段は良いのですが、少し疲れてくるとズレてきます。左右それぞれの眼に運動障害はありません。網膜剥離の
手術後に斜視が出た場合は、筋肉の癒着による眼球運動障害を伴う斜視なので、眼の動き方に制限があり、正面視(真っ直ぐ前を見たときの位置)迄は戻ってこられるのですが、動きが良くないのです。

 以前は硝子体手術が無かったので、すごく奥深いところに網膜剥離の孔があり、その外側にスポンジを置く手術の場合、かなりの率で眼球運動障害が出ていました。今でも深いところの剥離の時に出ることがあり、その場合直ぐにバックルを除去して眼球を戻すようにするのですが、それでも若干障害が残ることがありま
す。

 累進多焦点レンズ(境目のない遠近両用レンズ)はこれまでにも使われていますが、最近はその「回折型」といって、遠、近、中間、どの距離も見えるという眼鏡ができているそうです。実際に掛けてみるとハレーション(強い光の周りが白くぼやける現象)を起こしたり、光を分散してピントを合わせるので暗くなったりするようですが。

 現実には5m先と33cm先を基準に焦点を合わせ、正面の遠くを見るプリズムと、近くを見るプリズムの眼鏡二つを使うと良いと思います。兵庫医大の三村先生がこの治療を一番たくさんされており、大阪医大には斜視を専門に診る斜視外来があります。

 網膜剥離が黄斑部まで達していなかった人は、術後視力が良いため、手術の後、物が二重に見えるということが出てきます。バックリング手術をする患者さんには、あらかじめこのような症状があることをお話しします。これは、手術が洗練されてきた現在でも起こってしまう合併症です。

 また現在は、奥のほうに孔がある場合、バックリング手術ではなく硝子体手術にして、患者さんにあまり痛い思いをさせないようにしています。硝子体手術ができたのが40年くらい前、今のよう洗練され、安全にできるようになったのは、20年ほど前のことです。それまではバックリング手術で治せるものは治し、それでだめなら最後の手段が硝子体手術ということでした。
【夜になると見にくい】
 7年前、左眼に3回網膜剥離の手術をして、2年間オイルを入れていました。視力は0.02〜0.03です。右眼は白内障手術をしましたが、視力は1.0〜1.2見えます。ただ夜は運転が出来ませんし、歩くのも危なくてダメです。免許の更新は出来たのですが、左眼の回復は難しいと思います。

 左眼は、最初近くの眼科にかかり3 ヶ月くらい点眼していましたが、一向に良くならないので他の眼科に行ったところ、直ぐに大津の日赤を紹介されました。その日のうちに入院して手術をし、計3回の手術で3ヶ月入院しました。もっと早く気付いていたらと思います。

 網膜剥離という病気は、硝子体が年齢とともに縮んでくる現象、つまり後部硝子体剥離によって起こってくると言われています。後部硝子体剥離は、歳を取れば誰にでも起こるのですが、網膜剥離がどんな人に起こり、どんな人に起こらないかということは解っていないのです。強度近視の人は網膜が薄いので、網膜剥離になり易いと言われていますが、強度近視の人が皆さんこの病気になるわけではありません。また近視が無ければならないかと言うと、そうでもないのです。

 アメリカで亡くなられた人の眼を解剖した報告によりますと、20%くらいの方に網膜格子状変性と言って、網膜の薄いところがありました。でも、網膜格子状変性のある全ての人が、網膜剥離になるわけではありません。網膜剥離を起こす人は、5千人〜1万人に一人です。予兆といえるものは無く、特に年配の方が網膜剥離になる時は、前日に眼科にかかったとしても、発見することは難しいのです。

 網膜が剥がれて長い時間が経ちますと、増殖型硝子体網膜症に変わっていきます。網膜が剥がれているだけではなく、網膜の上に増殖膜が張って皺が伸びな
い状態になってきます。ご質問の方は、適切な治療を受けるまでに、ずいぶん時間がかかったようですが、網膜が無事復位して本当に良かったという感想です。

 シリコンオイルについては、オイルが入った状態で上向きにしていると、手術後数年を経過しても、緑内障を起こしてくることがありますので、横向きに休んで下さいとお願いしています。

 人間の眼は、左右の眼がちょっと離れているところから見ることによって、物を立体的に見ています。片眼で見ていても昼間なら影が見えますし、距離感を捉える色々な情報があるのですが、暗くなると情報が限られてしまうので、危なくなると思います。ただ片眼が見えなくても、一方の視力が0.8以上あって、150度以上の視野があれば、普通免許は問題ありません。
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