14年総会「グループディスカッション」B

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2014年総会
「グループディスカッション」B
回答 大阪医科大学眼科教授 池田恒彦先生
 
【閃輝性暗点】
  現在70才です。糖尿病で20年間薬を飲んでいて、一応コントロールされていると言われています。HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)の値は6.2ぐらいです。毎年1回は眼科を受診し、眼底をチェックしていますが、Aゼロ(糖尿病網膜症の分類法の一つで、まだ網膜症を発症していない状態)と言われています。

 最近、時々クラゲのようなものが見え、両眼をつぶっても、それが残ります。眼鏡の縁の見難い部分のようなものが、眼の中に漂います。起こった時は、車の運転は止めます。MRA(磁気共鳴血管画像)を撮りましたが、異常ありませんでした。

 閃輝性暗点でしょうか。眼を開けたときに、そういうものが見えるのは、飛蚊症といって、硝子体の濁りが見えているものです。眼を閉じても見えるというのは、他の原因です。2〜3分続いているということですが、多分閃輝性暗点ではないかと思います。これは脳の病気ですが、心配なものではありません。

 脳の血管が痙攣を起こし、血液の流れが一時的に悪くなるために起こると考えられています。典型的なのは、きらきらした模様がモザイクのように見えると言いますが、他にも色々な見え方をするようです。眼を閉じても見えているというのは、この状態が疑われます。模様が見えた後に片頭痛を起すことが多いですが、起こらないこともあります。

 何回も何回も出て、間隔が狭くなっていくようでしたら、MRAの検査をして下さい。それで問題なければ、心配はないでしょう。閃輝性暗点は光視症の一種で、脳の中で起こるものです。身体をじっと休めていると、治ります。
【再生医療と眼の病気】
 個人的にiPS細胞やSTAP細胞に関心があります。これらは網膜剥離に対する先進的な治療法になるのでしょうか。
 世界で初めて、iPS細胞を使った臨床治療が、間もなく日本で始まります。対象となるのは、加齢黄斑変性です。歳を取ると、視野の真ん中の黄斑部で、網膜の下に異常な血管が出てきたり、それが出血して、水膨れを作ったりするために、見えにくくなるというのが、加齢黄斑変性です。

 患者さんの細胞からiPS細胞を作り、さらにそこから網膜の一番下の色素上皮という細胞を作り、シート状にして眼の中に入れるというのが今回行われる治療です。

 我々は加齢黄斑変性に対して、手術で異常な血管を取るという治療をやっているのですが、そのとき異常な血管と一緒に、網膜色素上皮の細胞も取れてしまいます。網膜色素上皮は、網膜に栄養を与えている大事な細胞です。

 眼底はきれいになっても、大事な細胞の層が一枚無くなってしまうので、結局その部分の視野は真っ暗になってしまいます。そのため最近は、異常な血管を除去する手術はほとんど行われなくなりました。

 今主流になっているのは、血管の発生を抑える薬を眼球に注射するという方法です。今回の治療は、悪い血管を取り除いた後に、網膜色素上皮の細胞シートを埋め込もうというものです。大事な細胞を補って、上の網膜の元気を落とさないようにするという治療です。

 第2段階に考えられているのは、網膜色素変性症という遺伝性の病気の治療です。視野がだんだん欠けてきて、最終的には見えなくなるというもので、失明原因の上位にありますが、今は治療法がありません。この病気に対して、視細胞という細胞を移植して、何とか視力を維持しようというのが、次の方向です。

 加齢黄斑変性の臨床研究は、小保方さんの問題の影響で、実は少し遅れています。本当ですと今年始めないといけないのですが、開始できない状況になっているようです。京大眼科出身の眼科医で、理化学研究所の高橋政代先生が、山中伸弥先生と共同で進めている研究です。できれば早く始まって欲しいと思います。

 STAP細胞は、まだあるかどうかを検証している段階です。iPS細胞の一番の問題点は、腫瘍化するのではないかという懸念を、どうしても拭い去れないことです。ですから今回移植をした後で、何年間か経過を見るようです。それで大丈夫だということを確認し、ようやく一般に広がっていくことになります。ただリーダーの高橋先生は、腫瘍化することはないとおっしゃっていますので、非常に期待されています。

 しかし、今できるのは、網膜の一部の細胞の層を、きれいにシートにして入れるということだけです。網膜全体を再生できるというところまでは全然行っていません。眼球や網膜が再生できるという過剰な報道がなされ、患者さんが過度に期待し過ぎているというのが現実です。マスコミも考えて欲しいのですが、話が大きくなって、高橋先生も困っています。網膜を全部再生できるかどうかは、まだわかっていません。

 今のところ、加齢黄斑変性が対象で、その次に網膜色素変性症、角膜の再生は、阪大の西田幸二先生が頑張ってやっています。そのへんが最先端の治療ですが、実際に一般化するには、十年以上かかると思います。網膜剥離や別の病気は、まだまだ先の話になります。
(編集部注)
 池田先生のお答えは、2014年7月20日、総会の会場でのものです。その後9月12日、理化学研究所より、加齢黄斑変性に対する臨床研究の第一症例目の被験者に対し、網膜色素上皮(RPE)シートの移植が行われたとの発表がありました。

 被験者は70歳代の女性、約1.3mm×3mmのRPEシート1枚を片目の網膜下に移植したとのことです。

 次いで9月18日、被験者が退院したとの報告がありました。合併症等の発生はなく、経過は良好で、移植したシートは所定の位置に留まっているそうです。

 ただし、「RPEシート移植の安全性や視機能への影響を客観的に評価するためには、約1年間の観察期間が必要です。そのため、次の経過や結果に関する情報提供は、移植1年後以降を予定しています。なお、重篤な有害事象が生じた場合等はこの限りではありません。」とされています。

 2015年3月19日には、被験者の経過は順調で、経過観察を継続しているとの発表がありました。その後は何も発表はなく、特に間題は起こっていないようです。なおこの臨床研究は、6症例に行うことが予定されていましたが、本年3月以降、計画の見直しが行われ、新たな被験者の募集はストップしています。詳しくは理化学研究所のHPをご覧ください。

【視野の暗いところ】
 網膜剥離の手術後、視野の中に、少し黒くぼやっとしたところが残っています。これは、剥離してから手術までの間が、1週間と長かったからでしょうか。それとも手術したところだからですか。レーザー治療をしたところは、細胞が再生しないと聞いたのですが。
 手術までの長さは、術後の視力に関係しています。網膜が長いこと剥離していると、だんだん細胞が弱ってきます。くっ付いても元に戻りません。そこが暗点になって、視野が暗くなってしまいます。剥がれて比較的早期であれば、かなり戻ります。それがどの辺かと言うと難しいのですが、1〜2ヶ月経っていると、相当弱っています。

 1週間ですと、かなり戻るはずですが、レーザー光凝固をすると、レーザーを打ったところで網膜の神経細胞が傷んでしまい、暗点になってしまいます。これは仕方のないことです。その箇所を糊付けしないと、また網膜が剥がれてしまうので、ある部分の細胞を犠牲にして、他の多くの細胞を助けるという治療が行われます。
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