竹内忍教授をお訪ねして

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東邦大学大橋病院に
竹内 忍教授をお訪ねして
     

 このインタビューは、2006年2月26日、事務局の女性3名で行いました。

 

   
 
問い ずいぶんお忙しそうですね。
  
竹内先生

  私は日本眼科学会の常務理事をしていて社会保険関係などを担当しています。そのため関連の会議や委員会に出席するようになって、否応なしに国の予算や医療費の勉強もせざるを得ない立場におかれています。

 政府は財政を圧迫してしまうからという理由で、医療や社会福祉関係の予算はこれ以上増やせないとしていますが、老齢者の数がこれからも増える社会状況の中では医療費が増えるのは当然なことです。他の分野で無駄な出費を押さえて医療費の方にまわして欲しいと思いますが、縦割り行政ではそうもいかないようです。

 医療費関係で今年取り入れられそうなのは「混合医療」です。今までは、まだ保険で認められていない医療を受けようとするとそれに付随する医療も全額自己負担になっていました。たとえば癌治療で、まだ保険で認められていない薬を使うと、薬以外の医療についても健康保険が使えなくなって、全額自己負担になります。保険診療か自費診療かどちらかを選ばなくてはならなかったのです。

 混合医療になると薬だけは自己負担でそれ以外は保険診療ができることになります。私たちは全部を保険で診療できればと思って、新しい検査や治療について保険が適応できるように申請をするのですが、現状では認められるのはほんのわずかしかありません。

 そこでどうしても必要と思う治療には研究費などを使っていますが、研究費が豊富にあるわけではないので、誰にもというわけにはいかないのです。国としては小さな政府をめざしていて民間でできるものは民間に任せようとして、改革民間開放推進会議という諮問機関があって、医療関係でまず手をつけたのは病院に株式会社の参入を認めようということです。混合医療も含めて、医療にも選択を認めようというのが政府の方針のようです。

問い 医療制度の過渡期にあって、先生はそちらの方にもエネルギーを使っていらっしゃるんですね。ところで、この東邦大学大橋病院は建物がだいぶ古いようですが。
  
竹内先生

 東邦大学では大田区の大森病院が建替えの最中だし、千葉県の佐倉病院は何回か手直しをしていて眼科の設備は大変充実しています。大橋病院は病棟は混合病棟だし外来も狭いですね。これでも私が佐倉から戻ったとき、少し広げたのですが、これ以上は建物上の制約があって無理なのです。

問い 医療制度だけではなく、これから新人医師の研修制度も変わると聞いていますが。
  
竹内先生

 そうです。今までは卒業して国家試験に合格したら、自分のやりたい科を選んで自分の卒業した大学の医局で研修することが多かったのですが、今年から卒業してすぐに一つの科を選ぶことはできなくなり、2年間はいくつかの科を回って研修することになります。

 必修科目もありますが眼科は選択科目です。プライマリーケアーのために、専門以外のこともわかるようにということで、新しいシステムの研修が始まります。

 受け入れる研修医の人数も決まっていて、たとえば東邦大学の場合全部で60人を公募します。大森が30人、大橋と佐倉で15人ずつです。新しい制度がいいかどうかは一概にはいえないし、何年かたってみないとわからないと思います。たとえば麻酔科など2ヶ月研修しても、身に付くまではいかないだろうとか、教える方も中途半端な気持ちにならないだろうかとか、研修先の病院が単なる労働力としてしか扱わないだろうかとか、いろいろな問題が心配されます。

 そうはいっても研修医の熱意しだいかもしれません。また研修先の病院も評価されるので研修医たちに選んでもらえるように努力しなければなりません。新しい制度に向かって前向きの姿勢でいこうと思っています。

問い 先生は眼科だけではなくて、いろいろなことに興味を持って活動していて、いつもこれだ!と思ったところに集中して熱意を注いでいるという印象をうけます。眼科医としてはどんな風に歩んでこられたのでしょうか。
  
竹内先生

 大学の眼科医局には3年いました。医局にいる間に網膜と、眼科と耳鼻科の境界領域の病気に興味を持ちました。後者の方は当時関東労災病院が積極的にやっていましたが、網膜は網膜剥離を東京厚生年金病院がたくさん手がけているということで見学に行きました。

 当時清水昊幸先生は自治医大に移ったあとで部長は箕田健生先生でしたが、病室は40床あってフル回転していました。最初は籍がありませんでしたが、網膜剥離の患者さんが多く、手術もたくさん経験しました。箕田先生は私が行ってから 2年近くたったときに東大に戻られたのですが、辞める前に硝子体手術の器械を患者さん達から寄付してもらっていました。

 当時は硝子体手術の器械を持っている病院は都内では2ヶ所、まだ本当に初期の時代でした。私は東京厚生年金病院に8年いたのですが、箕田先生の後任の部長は角膜の専門家だったので、網膜関係の手術は私と、今は東京医科大学客員講師の加藤秋成先生と二人で全部やっていました。

問い 体力、気力に充実した八年間だったわけですね。
  
竹内先生

 その後東邦大学大橋病院の教授だった戸張幾生先生に誘われて移りました。東邦大学には硝子体手術の器械も手術用の光凝固の器械もなかったので、手術をするために自分で器械を持ち込んだり、器械メーカーから頼まれて性能を調べるために使った器械をそのまま使わせてもらったり、寄贈していただいたりしました。それらの器械を使って年間 400例近い手術をしていました。糖尿病網膜症の手術も多くて、毎日毎日夜おそくまでしていましたね。

問い 当時も先生のところに来る患者さんは、他の病院で手術をしたけれど治らなかった人など重症の患者さんが多かったのでしょうか。
  
竹内先生

 1〜2回の手術後に来られる場合はいいのですが、3〜4回手術をしたあとの再手術は困難が多いし、時間もかかります。やはり最初の手術で 9割近くは治したい、残りも2回目の手術では治したいと思っています。

問い 最近は網膜剥離でバックリング手術よりも硝子体手術をうける人が多いように感じますが。
  
竹内先生

 硝子体手術は画期的な手術で、それまで治すことのできなかった網膜の病気を治すことができるようになりました。ただ網膜剥離の硝子体手術には落とし穴があって、うまくいかなかった時に重症化して再手術が大変難しくなる場合があります。

問い ずいぶん前のことですが、私は最初の手術で網膜剥離が治らなくて硝子体手術が必要といわれたのですが、当時厚生年金病院にいらした竹内先生の診察を受けたところ硝子体手術は必要ないということで、普通の手術を受けて治りました。
  
竹内先生

 硝子体がひっぱっていたりすると、網膜の状態がよく見えないので手術法を選択するのは簡単ではありません。硝子体手術を最初から選択してもそれなりの成果はあがっていると思います。ただ最近は硝子体手術でなくても治る剥離でも硝子体手術をする傾向にあって、バックリングの手術の経験者が少なくなるのではないかと心配しています。

問い 先生はたくさんの後進を育てておられますね。
  
竹内先生

 佐倉病院では多くの医師を育てたと思います。院内だけでなく、全国から眼科医の研修を受け入れていました。手術の見学者もめずらしくありません。先日も東北の総合病院の医師がきていました。

問い 若い人に多いようですが、コンタクトレンズをつくるときの眼底検査で、網膜に薄いところがあるとか、裂孔が見つかったとき医師によって様子をみましょうといわれる場合と予防的にレーザーで光凝固をする場合があるようですが。
  
竹内先生

 眼底検査をしていて網膜が薄くなっていたり裂孔を見つけることはそんなに珍しいことではありません。そこで網膜剥離にならないようにレーザーをしたらいいのではと思いますが、自覚症状のない網膜裂孔に予防的なレーザー治療をして、 10年後に網膜剥離にならないかもしれませんが、レーザーをしなくても同じ結果かもしれないのです。

 それを比較して調べるのは大変なことで、今のところそのデーターはありません。ですから若い人で自覚症状はないけれど格子状変性といって網膜に薄いところがあったり小さな裂孔があった場合、レーザーをやった方がいいのか悪いのか現時点ではわかっていません。

 私は経験から基本的にレーザーをしない方針をとっています。若い人に対してのレーザーを慎重にするのは、自覚症状のない小さな裂孔にレーザーをして、一週間後に焼いたところが全部穴になって剥離をおこした症例をみたことがあるのです。こうなると手術も難しくて治すのが大変でした。予防的なレーザーをして治療の困難な網膜剥離をたとえ確率が低くても生じさせるよりは、レーザーをしないで、もし何年後かに網膜剥離になっても確実に手術で治せる方がいいと思っています。

 中高年で飛蚊症をきっかけに眼底検査をして馬蹄型の裂孔が見つかった時のレーザーは網膜剥離の発生を押さえられるというデータがあります。ですから中高年で飛蚊症を自覚して、見つかった新鮮な馬蹄型の裂孔に対してはレーザーをすることはあります。それでも穴をみて剥離に発展する心配のないと思うものは何もしないで様子をみていますが、ほとんどは何事もおこりません。

 最近は欧米でも予防的レーザーはやらなくなったようです。近いうちにアメリカでデータをつくる研究が始まるかもしれません。これは大変な作業でお金もかかりますし、実際どういう方法でできるか考えましたが、日本では困難なことが多すぎてできないと思います。

問い 網膜剥離治療の今後はどうでしょうか。
  
竹内先生

 網膜剥離の治療は手術的には治療の限界までいきついていると思います。網膜を解剖学的にくっつけるという意味ではほとんどの場合可能だと思います。

 次の段階は遺伝子操作などを含めた再生医療ということになるでしょう。眼科では角膜などは研究が進んでいます。網膜は組織学的に角膜とは違うし、いろいろ難しいと思いますが、その方向に進んでいくのだろうと思っています。


 竹内眼科クリニック

 
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